上智大学 理工学部 機能創造理工学科 教員紹介|高井健一教授の水素脆化・材料工学研究

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。

今回のテーマは、

「上智大学 理工学部 機能創造理工学科の高井健一教授と、水素脆化を中心とした材料工学研究」です。

自動車や橋などに使われる金属は、強ければ強いほどよいと思っていませんか。実は金属材料を高強度化すると、別の問題が生じることがあります。その一つが、水素によって金属がもろくなる「水素脆化」です。今回は、この現象を原子レベルから研究している高井健一教授の研究を、高校生にもイメージしやすい言葉で見ていきましょう。


高井健一教授はどんな研究をしている?

高井健一教授は、上智大学 理工学部 機能創造理工学科に所属し、材料工学、水素脆性、水素エネルギー材料などの研究に取り組んでいます。

上智大学理工学部の公式情報では、主な研究テーマとして「環境負荷低減に向けた輸送機器およびインフラ材料の水素脆化研究」が示されています。研究キーワードには、水素脆性、水素トラップサイト、高強度鋼、昇温脱離法、破壊、遅れ破壊、チタン、ステンレス鋼、環境脆化などが挙げられています。

高井教授は早稲田大学で博士(工学)を取得し、1990年から1999年まで日本電信電話株式会社で通信用材料の研究に従事しました。その後、1999年に上智大学理工学部機械工学科に着任し、現在の機能創造理工学科につながる教育・研究の中で、長年にわたり機械・構造材料などの研究を続けています。


「水素脆化」とは何だろう?

高井教授の研究を理解するうえで重要な言葉が「水素脆化」です。

金属材料の内部に水素が入り込むと、材料の強度や破壊のしかたに影響を与えることがあります。高強度の材料ほど水素脆化が起こりやすくなる場合があり、高強度鋼を幅広く利用していくうえで重要な研究課題となっています。

たとえば自動車では、車体に使う材料を高強度化できれば、安全性に配慮しながら使用する材料を減らし、軽量化につなげられる可能性があります。車体が軽くなれば、走行時のエネルギー消費を抑えることにもつながります。

しかし、「強い材料を作ればすべて解決」というわけではありません。強度を高めることで水素の影響を受けやすくなるなら、なぜそうなるのかを解明し、安全に使える材料を考える必要があります。この一見矛盾する問題に向き合うところに、材料工学の面白さがあります。


目に見えない水素をどう調べる?

水素脆化研究の難しさの一つは、金属内部に入り込んだ非常に小さな水素の状態を調べなければならないことです。

高井教授の研究室では、「昇温脱離法」などを用いた水素の存在状態の解析に取り組んでいます。昇温脱離法とは、試料の温度を上げながら、材料から放出される水素を測定する方法です。どのような条件で水素が放出されるかを詳しく調べることで、金属内部で水素がどのような場所に存在していたのかを考える手がかりが得られます。

上智大学理工学部が公開している研究情報では、焼戻しマルテンサイト鋼中の水素の存在状態や、結晶粒界と水素の相互作用、高強度鋼の水素脆化などが研究テーマとして示されています。

つまり、目に見える「金属が壊れた」という結果だけを見るのではなく、その前に材料内部で何が起きていたのかを小さなスケールまでさかのぼって調べていくのです。


高校の化学・物理が材料研究につながる

材料工学という名前を聞くと、高校ではあまりなじみがないかもしれません。しかし、その土台には高校で学んでいる化学や物理、数学があります。

化学で学ぶ原子や結晶、金属の性質は、大学では「材料内部の原子の並び方が強度にどう影響するのか」「水素が金属内部のどこに存在するのか」といった問いへ発展します。また、物理で学ぶ力やエネルギーの考え方は、材料に力を加えたとき、どこまで耐えられるのか、どのように変形・破壊するのかを考える基礎になります。

高井教授の主な担当講義として、上智大学の公式情報には「マテリアルサイエンス」「エネルギーと材料」「材料工学特論」「機能創造理工学実験演習2」などが紹介されています。

高校では別々の科目として学んでいる内容が、大学では一つの現実的な問題を解明するために組み合わされていくのです。


水素エネルギーと材料の安全性

高井教授の研究は、水素エネルギーを利用する社会とも関係しています。

水素を利用するためには、水素そのものの製造や輸送方法だけでなく、水素に触れる金属材料についても考えなければなりません。材料が水素によって劣化・破壊する可能性があるなら、どのような材料を選び、どのような条件で使用するのかを科学的に検討する必要があります。

高井教授は、燃料電池システム用材料の水素環境脆化や、各種金属材料中における水素の存在状態などについても研究してきました。

ここで大切なのは、「水素を使えば環境問題がすべて解決する」と単純に考えないことです。新しいエネルギー技術を社会で安全に使うためには、その技術を支える材料の強度、耐久性、安全性まで考える必要があります。科学技術には利点だけでなく課題もあり、その両方を研究することが社会実装には欠かせません。


「材料」に注目すると身近な技術の見方が変わる

高校生の皆さんも、身近な製品を「材料」という視点から見直してみると、研究につながる問いを見つけられます。

たとえば、「なぜ自動車には鉄だけでなくさまざまな材料が使われているのだろう」「強い金属と壊れにくい金属は同じなのだろうか」「橋や鉄道などの構造物は長期間使ってもなぜ安全性を保てるのだろう」と考えてみるのもよいでしょう。

化学実験で予想と異なる結果が出た経験や、物理の授業で材料に加わる力に興味を持った経験も、立派な出発点になります。重要なのは、「実験をした」「科学部に所属した」という実績そのものではなく、その経験から何を疑問に思い、何を調べたのかという過程です。


推薦入試では自分の興味を一段深く考えてみよう

上智大学 理工学部 機能創造理工学科の推薦入試を考えている人は、「自動車が好きだから材料を研究したい」「環境問題に興味があるから水素を研究したい」から、もう一段深く考えてみましょう。

たとえば、「自動車の軽量化について調べる中で、材料を高強度化するだけでは水素脆化という課題が生じることを知った。材料の強さと安全性を両立するには何が必要なのか知りたい」というように、自分が抱いた疑問と大学での研究を結びつけていくことができます。

もちろん、高校生の段階で水素脆化の専門知識をすべて理解したり、将来の研究テーマを完全に決めたりする必要はありません。まずは興味を持ったテーマについて調べ、「なぜ?」「本当にそうなのか?」「別の方法はないのか?」と問いを広げてみることが大切です。

こうした整理は、出願書類を考えたり、面接で問われる志望理由を自分の言葉で説明したりするときにも役立ちます。


身近な金属から大学での研究を想像してみよう

高井健一教授の研究を見ると、材料工学は単に「強い金属を作る学問」ではないことが分かります。材料内部で起こる現象を原子レベルまで調べ、なぜ壊れるのかを明らかにし、その知識を安全な輸送機器やインフラ、水素エネルギー材料などにつなげていく研究です。

上智大学 理工学部 機能創造理工学科に興味がある人は、自動車、鉄道、橋、建物など身近なものに使われている材料にも目を向けてみてください。「なぜこの材料なのだろう」という小さな疑問から、高校で学ぶ化学や物理と大学の材料工学とのつながりが見えてくるかもしれません。

自分の身近な疑問を調べながら、「上智大学ではどんな研究ができるのか」「自分は何をもっと知りたいのか」まで考えてみましょう。

もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。

※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。