
上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|後藤聡史助教の作用素環論・部分因子環研究とは
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 情報理工学科の後藤聡史助教と、作用素環論・部分因子環の研究」です。
情報理工学科というと、AIやプログラミング、データ分析などをイメージする人が多いかもしれません。しかし、その基盤には数学があります。しかも大学では、「すぐに何かへ応用するための数学」だけではなく、数学の構造そのものを解き明かす純粋数学も研究されています。
後藤聡史助教が研究している「作用素環論」は、そのような数学の世界を知ることができる分野の一つです。
後藤聡史助教はどんな研究者?

後藤聡史助教は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、作用素環論を専門としています。
特に研究しているのが、部分因子環のJones index理論と、その中に現れる代数的・組み合わせ論的構造です。研究テーマとして「部分因子環の代数的・組み合わせ論的構造の研究」を掲げています。
専門的にはOcneanuのparagroup理論などを扱い、部分因子環を分類・理解するための数学的構造を研究しています。
高校数学から見るとかなり抽象的な世界ですが、その根底にあるのは「複雑な数学的対象には、どのような構造や規則が隠れているのか」という問いです。
作用素環論とはどんな数学?
作用素環論は、関数解析と呼ばれる数学の分野から発展した研究領域です。
ここでいう「作用素」は、ある数学的な対象に働きかけ、別の対象へ移すものだと考えるとよいでしょう。高校数学で関数を学ぶと、「数を入力すると別の数が出力される」という関係を扱います。大学数学では、この考え方をより抽象的な空間や変換へ広げていきます。
作用素を集めたとき、そこにはどのような計算規則があるのか。どのような構造を持っているのか。それを数学的に調べるのが作用素環論です。
作用素環論は量子力学を数学的に記述する問題とも関係しながら発展してきましたが、現在では純粋数学としても豊かな理論が研究されています。
「部分因子環」とJones indexとは?
後藤助教の研究で重要なキーワードが「部分因子環」と「Jones index」です。
大きな数学的構造の中に、それより小さな構造が含まれている状況を考えてみましょう。このとき、「小さい構造が大きい構造の中にどのように入っているのか」を調べることで、全体の特徴が見えてくることがあります。
部分因子環の理論でも、ある因子環の中に別の因子環が含まれている関係を研究します。その包含関係を調べるために重要な役割を果たすのがJones indexです。
これは単純な要素数の比較ではありませんが、二つの数学的構造の包含関係を表す重要な数値として考えることができます。
この理論を築いたVaughan Jonesの研究は、その後、結び目理論における「Jones多項式」の発見にもつながりました。
結び目理論ともつながる不思議な数学
第5回で紹介した大城佳奈子准教授の研究では「結び目理論」が登場しました。実は、後藤助教が研究する作用素環論の世界も、結び目理論と意外な接点を持っています。
一見すると、「無限次元空間の作用素を研究する数学」と「ひもの結び方を研究する数学」はまったく違うように見えるでしょう。
しかし、Jones indexの研究から生まれた数学的な考え方が、結び目を区別するためのJones多項式へとつながりました。
数学では、このように別々に見える研究分野の間に、思いがけない共通構造が発見されることがあります。「なぜまったく違う問題が同じ数学で説明できるのか」を考えることも、純粋数学の大きな魅力です。
paragroup理論とは?

後藤助教の研究では、「Ocneanuのparagroup理論」という専門的な理論が重要になります。
部分因子環を研究していくと、その包含関係からさまざまな代数的・組み合わせ論的な情報が現れます。paragroup理論は、そうした構造を捉え、部分因子環を理解するための枠組みの一つです。
高校生の段階でこの理論を理解する必要はありません。注目してほしいのは、非常に抽象的に見える数学的対象でも、そこに隠れている規則を取り出し、分類したり比較したりする方法があるということです。
後藤助教は、こうした部分因子環の持つ代数的・組み合わせ論的構造を明らかにする研究に取り組んでいます。
量子物理などとも接点を持つ作用素環論
作用素環論は、もともと量子力学の数学的な基礎とも深く関係しながら発展してきた分野です。
さらに、部分因子環をめぐる数学は、量子群、可解格子模型、共形場理論、位相的場の理論、結び目理論、低次元トポロジーなど、数学・数理物理のさまざまな領域と接点を持っています。
近年では、部分因子環や関連する数学的構造と、量子情報やテンソルネットワークなどとの関係も研究されています。
ただし、これは「後藤助教が量子コンピュータを開発している」という意味ではありません。後藤助教の中心的な研究は作用素環論・部分因子環に関する数学的な基礎研究です。
すぐに特定の製品へ応用されることを目的とするのではなく、数学そのものの構造を深く理解する研究だからこそ、思いがけない別分野とのつながりが生まれる可能性があります。
なぜ情報理工学科で純粋数学を研究するの?
上智大学 理工学部 情報理工学科では、「人間情報」「情報通信」「社会情報」「数理情報」という4つのキーテーマを掲げています。
情報科学を支えているのは、コンピュータやプログラミングだけではありません。アルゴリズム、データ分析、暗号、AIなど、さまざまな情報技術の背景には数学的な考え方があります。
もちろん、後藤助教の研究をそのままAIや一般的なソフトウェア開発へ直接結びつけることは適切ではありません。
重要なのは、情報理工学科には「数学そのものを深く探究する」という学びの方向もあることです。後藤助教の研究は、数理情報という領域の奥深さを示す研究の一つといえるでしょう。
高校数学からどうつながる?
作用素環論そのものは大学・大学院で学ぶ高度な数学ですが、その入口となる考え方は高校数学にもあります。
関数について学ぶとき、「入力を別の値へ変換する」という考え方を使います。また、集合やベクトル、行列などを学んでいくと、「数学的な対象そのものではなく、その対象同士の関係や構造を考える」という視点が少しずつ現れてきます。
大学では、こうした数学をさらに抽象化し、定義と証明を積み重ねながら理論を構築していきます。
計算問題を速く解くことだけが数学ではありません。「なぜこの定義が必要なのか」「異なる対象に共通する構造はないのか」と考えることも、数学研究の重要な部分です。
推薦入試では「数学が得意」だけで終わらせない
推薦入試で情報理工学科を志望し、数学に興味があるなら、「数学が得意です」というところからもう一歩深めてみましょう。
たとえば、「公式を使うより、その公式がなぜ成り立つのか考えることが好き」「一見違う問題に同じ数学的構造が現れることが面白い」「高校では扱わない抽象的な数学を学んでみたい」といった自分の関心を整理できます。
また、Jones indexと結び目理論の関係を調べ、「なぜ作用素環という抽象的な数学から、結び目を調べる多項式が生まれたのだろう」と疑問を持つことも探究の入口になります。
高校生の段階で作用素環論を理解している必要はありません。分からないものに出会ったときに、「これは何だろう」「なぜ別の数学とつながるのだろう」と問いを持つことが大切です。
情報理工学科で「数学そのもの」を探究する

後藤聡史助教の研究を見ていくと、上智大学 理工学部 情報理工学科の学びが、AIやプログラミングだけではないことがよく分かります。
作用素環論、部分因子環、paragroup理論といった抽象的な数学を通して、複雑な構造の中にある規則を発見し、それを厳密に説明していく。そこには、純粋数学ならではの研究の面白さがあります。
「すぐ役立つかどうか」だけではなく、「なぜそうなるのかを根本から知りたい」という気持ちがある人は、情報理工学科の数理分野にも目を向けてみてください。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。
※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
KOSSUN教育ラボでは、上智大学の推薦入試対策に特化した
上智大学合格プロジェクト
を完全定員制(先着10名限定)にて設け、専門性の高い個別サポートを行っています。
限られた時間の中でも本気で上智大学合格を掴み取りたい方は、今すぐ 無料個別相談会 にお申し込みください。
※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。


