
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 教員紹介|八杉徹雄准教授の発生生物学・神経科学研究
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 物質生命理工学科の八杉徹雄准教授と、生物科学と数学を組み合わせて生命の仕組みを探る研究」です。
「一つの受精卵から、なぜ複雑な体や脳がつくられるのだろう」「細胞は、いつ増えるのをやめ、どのように役割を変えていくのだろう」。高校の生物で細胞分裂や遺伝子について学んだとき、このような疑問を持ったことはありませんか。今回は、ショウジョウバエをモデル生物として、発生や神経系の仕組みを研究している八杉徹雄准教授について紹介します。
八杉徹雄准教授はどのような研究者?
八杉徹雄准教授は、上智大学 理工学部 物質生命理工学科に所属し、発生生物学や神経科学などの研究に取り組んでいます。上智大学の公式情報では、研究分野としてシステムゲノム科学、神経科学一般、発生生物学が示されており、ショウジョウバエを使った研究を進めています。
特に注目しているのが、体がつくられていく「発生」の過程です。私たちの体は、最初から現在の形をしているわけではありません。一つの受精卵から細胞が増殖し、それぞれ異なる役割を持つ細胞へと「分化」することで、組織や器官が形成されていきます。
八杉准教授は、この細胞の増殖や分化がどのように調節されているのかを研究しています。なかでも神経前駆細胞からさまざまな神経細胞が生み出される仕組みや、組織の大きさがどのように決まるのかといった生命科学の基本的な問いに取り組んでいます。
なぜショウジョウバエを研究するの?

八杉准教授の研究で重要な役割を担っているのが「ショウジョウバエ」です。果物の周辺などで見かける小さなハエですが、生命科学では長い歴史を持つ重要なモデル生物です。
「人間の脳について知りたいのに、なぜハエを調べるの?」と思う人もいるでしょう。生命科学では、研究しやすい生物を詳しく調べることで、生物に共通する基本的な仕組みを明らかにする方法があります。
ショウジョウバエは世代交代が比較的早く、遺伝学的な研究手法が充実しているため、遺伝子の働きと細胞・組織の変化を結びつけて研究するのに適しています。八杉准教授はショウジョウバエの視覚中枢などを研究対象として、組織が形成される過程や神経幹細胞の増殖・分化を調べています。
大切なのは「ショウジョウバエの研究結果がそのまま人間に当てはまる」と考えることではありません。まず比較的シンプルなモデルから生命現象を支える原理を探り、より複雑な生物を理解するための手がかりを得ていくのです。
細胞はどうやって神経細胞になっていく?
八杉准教授が研究してきたテーマの一つに、神経前駆細胞が時間とともに変化していく仕組みがあります。神経前駆細胞とは、将来さまざまな神経細胞などになるもととなる細胞です。
脳には異なる役割を持つ多様な神経細胞があります。それらが無秩序につくられているのではなく、発生の過程で細胞の増殖や分化が調節されることで、複雑な神経系が形づくられていきます。
高校生の皆さんは、生物基礎や生物で「細胞分裂」「遺伝子」「DNA」「発生」などを学んでいると思います。大学では、それらを覚えるだけではなく、「遺伝子の働きが変わると細胞の増え方はどう変化するのか」「細胞同士はどのような情報をやり取りしているのか」といった、より具体的な問いを実験によって確かめていきます。
「組織の大きさ」はどうやって決まるのか
もう一つの重要な研究テーマが、組織のサイズを決める仕組みです。
生物の体では、細胞がただ増え続けるのではなく、発生に合わせて増殖や成長が調節されます。では、細胞はどのような仕組みで適切な大きさの組織を形成するのでしょうか。
上智大学が公開している研究情報では、八杉准教授はショウジョウバエを使い、Piwi/piRNA複合体と呼ばれる仕組みと組織サイズの調節との関係についても研究しています。また、2026年の上智大学理工学振興会の資料では、「ショウジョウバエ視覚中枢をモデルとした組織形成ダイナミクスの理解」という研究課題も確認できます。
高校の教科書で「細胞分裂」を学ぶと、一つの単元として完結しているように感じるかもしれません。しかし大学の研究では、その先に「いつ分裂するのか」「いつ止まるのか」「なぜ一定の大きさになるのか」という、まだ研究されている問いが広がっています。
生物学だけでなく数学からも生命を見る
八杉准教授の研究の面白いところは、生物学的な実験だけで生命現象を理解しようとしているわけではないことです。上智大学の公式研究紹介では、数理科学の研究者との共同研究を行い、数学的なアプローチを生命科学に取り入れていることも紹介されています。
生き物は非常に複雑です。顕微鏡で細胞を観察し、遺伝子の働きを調べるだけでは、複数の細胞が時間とともに変化していく全体像を理解しにくい場合があります。
そこで、実験で得られたデータをもとに数理モデルをつくり、「この条件なら細胞はどのように変化するのか」を考えます。そしてモデルから得られた予測を、再び生物実験で確かめます。実験と数学を行き来することで、生命現象の背後にあるルールを探っていくのです。
上智大学 理工学部 物質生命理工学科が、物理学・化学・生物学・環境科学・材料工学などを複合的に学ぶことを掲げていることともつながる研究スタイルといえるでしょう。
高校の生物や数学から研究への「問い」をつくってみよう

八杉准教授の研究に興味を持ったからといって、高校生の段階で高度な発生生物学や数理モデルを理解している必要はありません。
まずは高校で学んでいる内容から、自分なりの疑問を見つけてみてください。
たとえば、「同じDNAを持っているはずなのに、なぜ神経細胞と筋肉の細胞では形や働きが違うのか」「細胞はどうやって自分が分裂するタイミングを判断するのか」「生物の複雑な変化を数学でどこまで表現できるのか」といった疑問も入口になります。
授業で疑問に思ったことを教科書だけで終わらせず、大学の研究紹介や科学記事を読んでみる。分からない言葉があれば調べる。その過程で新しい疑問が生まれれば、それも立派な探究です。
推薦入試では「なぜ興味を持ったのか」を深めよう
上智大学 理工学部 物質生命理工学科の推薦入試を考える際、教員の研究内容を調べることは、自分が大学で学びたいことを具体化する一つの方法です。
ただし、「八杉先生の研究に興味があります」だけでは、自分自身の問題意識までは伝わりません。
たとえば、生物の授業で発生を学んだことから細胞分化に興味を持ったのであれば、「なぜ同じ遺伝情報から異なる細胞が生まれるのか疑問を持った」「調べる中で神経細胞の形成に関心が広がった」「さらに実験だけでなく数理的に生命現象を捉える研究を知った」というように、興味が深まった過程を整理してみましょう。
探究活動や科学部などの特別な実績がなければいけないわけではありません。日々の授業やニュース、身近な疑問から出発して、自分で調べ、考えたことを大学での学びへつなげていくことが大切です。
物質生命理工学科で「生命」を多角的に考える

上智大学 理工学部 物質生命理工学科では、物理学、化学、生物学などを一つの領域だけに閉じず、複合的に学ぶ教育が行われています。八杉准教授の研究も、生物科学を中心としながら、数理科学の視点を取り入れて生命現象を理解しようとする研究です。
高校で生物を学んでいて「覚えることが多い科目」と感じている人も、少し見方を変えてみてください。教科書に書かれている生命現象について「なぜこうなるのだろう」と問い直してみると、その先には現在も研究が続いている世界があります。
八杉准教授の研究をきっかけに、自分が高校で学んでいる生物や数学が大学でどのようにつながるのか、そして上智大学 理工学部 物質生命理工学科でどんな問いを追究してみたいのか、ぜひ考えてみてください。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。
※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。


