上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|澁谷智治教授の誤り訂正符号・情報セキュリティ研究とは

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。

今回のテーマは、

「上智大学 理工学部 情報理工学科の澁谷智治教授と、誤り訂正符号・情報セキュリティの研究」です。

スマートフォンで写真を送ったり、動画を見たりするとき、私たちは「送ったデータが途中で壊れてしまうかもしれない」と意識することはほとんどありません。また、大切な情報を安全に保存するためには、第三者から情報を守る仕組みも必要です。

こうした情報の「正確さ」と「安全性」を数学的な方法によって支える研究に取り組んでいるのが、澁谷智治教授です。


澁谷智治教授はどんな研究者?

澁谷智治教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、情報セキュリティ、符号化技術、情報理論、情報数理などを研究しています。

東京工業大学大学院理工学研究科で博士課程を修了し、博士(工学)の学位を取得しています。研究キーワードには、LDPC符号、線形符号、誤り訂正符号、線形連立方程式、反復復号、符号パラメータなどが挙げられています。

研究テーマには、誤り訂正符号に関する研究のほか、秘密分散法や、安心・安全な分散コンピューティングに関する研究などがあります。

情報を正しく届けるにはどうすればよいのか。そして、重要な情報を安全に扱うにはどうすればよいのか。澁谷教授の研究は、現代の情報社会を支える基礎的な問題と深く関わっています。


デジタルデータにも「間違い」は起こる

デジタルデータというと、常に正確に送受信されるものだと思うかもしれません。しかし実際の通信やデータ保存では、さまざまな原因によって情報に誤りが生じる可能性があります。

たとえば、本来「0」として送った情報が、受信するときに「1」と判断されてしまうことがあります。

そこで必要になるのが「誤り訂正符号」です。

データに一定の規則に基づいた情報を加えておくことで、受け取ったデータの一部に誤りがあっても、それを発見したり、条件によっては元の情報を復元したりできるようにします。

単に同じ情報を何度も送ればよいわけではありません。できるだけ少ない追加情報で、どの程度の誤りまで訂正できるのか。その仕組みを数学的に考えることが、符号理論の重要な課題です。


LDPC符号とは?

澁谷教授の主要な研究キーワードの一つが「LDPC符号」です。

LDPCは「Low-Density Parity-Check」の略で、日本語では低密度パリティ検査符号と呼ばれます。誤り訂正符号の一種で、情報を正しく伝えるために利用される重要な符号です。

LDPC符号では、送られてきたデータが一定の条件を満たしているかを調べながら、誤りを推定していきます。その際には「反復復号」と呼ばれる、計算を繰り返しながら正しい情報へ近づけていく方法などが利用されます。

澁谷教授は、LDPC符号をはじめとする線形符号について、その構造や復号方法、符号パラメータなどを数理的に研究しています。

私たちが普段意識することの少ない「情報を正確に伝える」という問題の背景にも、高度な数学があります。


「暗号」と「誤り訂正符号」は何が違う?

誤り訂正符号と暗号は、どちらも情報を変換するため、似た技術に見えるかもしれません。しかし、目的は異なります。

誤り訂正符号は、通信や保存の途中で情報に誤りが生じても、正しい情報を復元できるようにすることが主な目的です。

一方、暗号では、情報を見てはいけない人に内容を知られないようにすることなどが重要になります。

つまり、「壊れても直せるようにする」のが誤り訂正の考え方であり、「必要な人だけが安全に情報を扱えるようにする」のが情報セキュリティの考え方の一つです。

澁谷教授の研究では、こうした異なる方向から情報の信頼性や安全性に関わる問題を扱っています。


秘密を「分けて守る」秘密分散法

情報セキュリティに関係する研究テーマの一つが「秘密分散法」です。

秘密分散法では、重要な情報をそのまま一か所に保存するのではなく、「シェア」と呼ばれる複数の情報に分けます。そして、あらかじめ決めた条件を満たすシェアが集まった場合にだけ、元の秘密を復元できるようにします。

たとえば、大切な情報を一人だけが管理していると、その人の持つデータが失われたり漏えいしたりした場合に大きな問題になります。情報を適切に分散させることで、一つの場所だけに依存しない仕組みを考えることができます。

澁谷教授は「無限個のシェアを生成可能な秘密分散法」など、秘密分散法の数理的な仕組みに関する研究にも取り組んでいます。

ここでも重要なのは、「どう分ければ安全なのか」「どのような条件なら元の秘密を復元できるのか」という数学的な設計です。


複数のコンピュータで情報を安全に扱う

澁谷教授の研究テーマには、「安心・安全な分散コンピューティングに関する研究」もあります。

分散コンピューティングとは、一台のコンピュータだけですべてを処理するのではなく、複数のコンピュータなどが役割を分担しながら処理する考え方です。

複数の場所で情報を扱えば、一部に問題が発生した場合にどのように処理を続けるのか、情報をどのように守るのかといった新しい課題が生まれます。

誤り訂正符号や秘密分散法などの数学的な技術は、このような情報システムの信頼性や安全性を考えるうえでも重要な研究対象になります。


情報セキュリティは「攻撃を防ぐ」だけではない

「情報セキュリティ」と聞くと、ウイルス対策やサイバー攻撃への防御を思い浮かべる人も多いでしょう。

しかし、情報を安全に扱うためには、それだけではありません。

必要な情報を正しく保存できること、通信途中で情報が壊れても検出・訂正できること、秘密情報を適切に管理できることなど、さまざまな技術が関係しています。

澁谷教授の研究は、特定のサイバー攻撃への対処法を研究するというよりも、符号理論や暗号などの数理的な考え方を通して、信頼できる情報システムを支える基盤を研究していると捉えると分かりやすいでしょう。


高校数学とどうつながる?

誤り訂正符号や秘密分散法には、数学が重要な役割を果たします。

高校で学ぶベクトルや行列につながる線形代数的な考え方、確率、整数の性質などは、大学で符号理論や暗号理論を学んでいくための基礎になります。

たとえば、「0」と「1」だけの世界でも、一定の規則に従って情報を組み合わせることで、データに誤りがあるかどうかを判断する仕組みをつくることができます。

高校数学では計算問題として学んでいる内容も、大学では「情報を正確に伝える」「秘密を安全に管理する」という情報技術へとつながっていきます。

数学とコンピュータがどのように結びついているのかを知りたい人にとって、符号理論や情報セキュリティは興味深い分野でしょう。


推薦入試では「セキュリティに興味がある」を深めよう

推薦入試で情報理工学科を考えている人の中には、「情報セキュリティを学びたい」という人もいるでしょう。そこから、自分がどのような問題に関心を持っているのかを具体的にしてみてください。

たとえば、「通信中にデータの一部が壊れても、なぜ元に戻せるのだろう」「重要な情報を一か所に保存しない方法はあるのだろうか」「少ない追加データで、どこまで通信エラーを訂正できるのだろう」といった問いが考えられます。

スマートフォンでメッセージや画像を送るという身近な行動から、「情報が正しく届くのはなぜだろう」と考えてみるのもよいでしょう。

高校生の段階で高度な暗号理論や符号理論を理解している必要はありません。普段当たり前に利用している情報通信について、「なぜ安全なのか」「なぜ正確に届くのか」と疑問を持ち、その仕組みを調べることが研究への入口になります。


目に見えないところで情報社会を支える数学

澁谷智治教授の研究を見ていくと、私たちが毎日利用している情報システムの背景には、多くの数学的な仕組みが存在することが分かります。

誤り訂正符号、LDPC符号、秘密分散法、分散コンピューティングなどは、普段の生活で名前を意識することは少ないかもしれません。しかし、「情報を正確に扱う」「情報を安全に扱う」という情報社会の基本的な課題と深く関係しています。

上智大学 理工学部 情報理工学科を調べる際には、目に見えるアプリやAIだけでなく、その背後で情報の信頼性や安全性を支えている数理技術にも注目してみてください。

もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。

※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。