
上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|炭親良准教授の医用超音波・生体計測研究とは
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 情報理工学科の炭親良准教授と、医用超音波・生体計測の研究」です。
病院で使われる超音波検査では、体を大きく傷つけることなく、体内の状態を画像として観察することができます。では、体の外側から得られた信号を、どのように処理すれば、内部の組織の状態をより詳しく捉えることができるのでしょうか。
炭親良准教授は、生体医工学、計測システム工学、可視化情報学、信号処理などを専門とし、超音波や電磁波などを利用した生体計測や画像診断、治療に関係する技術を研究しています。
炭親良准教授はどんな研究者?

炭親良准教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、生体医工学、通信工学、計測システム工学、可視化情報学、コヒーレント信号処理、逆問題などを専門としています。
上智大学で学士・修士・博士(工学)の学位を取得し、日本学術振興会特別研究員や海外での客員研究員などを経て、上智大学で教育・研究に携わってきました。
現在の主な研究テーマには、生体医工学、超音波・電磁波による計測や治療、生体情報学、リモートセンシング、可視化情報学、AI、環境計測などがあります。
特に注目したいのが、体や物体の内部を直接見ることが難しいときに、外側から取得した信号を処理し、内部の状態を推定・可視化する研究です。
超音波で体の中を「見る」とは?
超音波は、人間が耳で聞くことのできる範囲より高い周波数を持つ音波です。
超音波を体内へ送り、組織などから返ってくる信号を測定することで、体の内部に関する情報を得ることができます。
ただし、装置が体内をカメラのように直接撮影しているわけではありません。
返ってきた信号を計測し、信号処理や数値計算によって意味のある情報へ変換することで、私たちが理解できる画像などとして表現しています。
ここに、医療と情報理工学との大きな接点があります。正確な計測だけでなく、取得した信号から必要な情報をどのように取り出すかが重要になるのです。
組織の「硬さ」を計測する
炭准教授の研究では、超音波エコー法やMR、OCTなどを利用し、生体組織の変形や粘弾性に関する情報を計測する技術が研究されています。
「粘弾性」という言葉は難しく見えますが、物体が力を受けたときにどのように変形し、どのように元へ戻るのかという性質に関係します。
人間の体も、場所によって硬さや変形の仕方が異なります。
その違いを定量的な情報として捉えることができれば、組織の状態を評価するための材料になります。
炭准教授は、がん病変などを対象とした粘弾性計測や鑑別診断に関係する技術を研究しています。ただし、「硬い場所を測れば、それだけでがんを早期発見できる」という単純なものではありません。実際の診断にはさまざまな情報や医学的判断が必要です。
HIFUとはどんな技術?

炭准教授は、計測だけでなく、強力超音波を利用した治療手段についても研究しています。
その一つがHIFUです。HIFUは「High Intensity Focused Ultrasound」の略で、高強度の超音波を対象となる場所へ集中させる技術です。
超音波のエネルギーを体内の特定領域へ集めることで、組織を加熱する治療方法などへの利用が研究されています。
炭准教授の研究では、がん病変などを対象として、HIFUや電磁波を利用した加熱治療手段と、その治療をモニタリングする方法の開発にも取り組んでいます。
ここでも、「超音波を当てれば治療できる」というだけではありません。どこへ、どの程度のエネルギーを与えるのか、その結果をどう計測するのかという複数の技術が関係します。
「逆問題」とは?
炭准教授の専門分野には「逆問題」というキーワードもあります。
私たちは通常、「原因が分かっていて、その結果を求める」という問題をよく考えます。
一方、逆問題では、観測された結果から、その原因や内部の状態を推定します。
たとえば、直接見ることのできない体内から返ってきた信号を測定し、そのデータから「内部ではどのような状態になっているのか」を考えることも、逆問題として捉えることができます。
しかし、同じような測定結果を生む状態が複数考えられる場合もあります。そのため、どのような数理モデルを使い、どのように信号を処理するのかが重要になります。
物理現象を理解する力と、数学・情報処理を組み合わせる必要がある研究分野です。
医用画像は「画像」だけを研究するわけではない
医用画像という言葉から、完成した画像をAIで分類する研究を想像する人もいるでしょう。
しかし、炭准教授の研究では、その画像ができる前の「計測」や「信号処理」も重要です。
どのようなセンサや探触子を使うのか。どのような信号を取得するのか。ノイズなどの影響をどう扱うのか。そして、取得した信号からどのような計算によって画像や物性情報を再構成するのか。
現在は、超音波画像の処理にAIを利用する研究も進められていますが、AIだけで医用計測が成立するわけではありません。
物理、計測、数学、信号処理、情報科学などが組み合わさっているところが、この研究領域の特徴です。
超音波だけではない多様な計測方法

炭准教授が扱う計測技術は、超音波だけではありません。
MRやSQUIDを利用した磁場・電磁気的な計測、赤外線や超音波などを利用した温度・熱に関する計測、OCTを利用した計測など、さまざまな方法を研究しています。
測りたい対象によって、適した物理現象や計測方法は異なります。
そのため、「何を知りたいのか」に応じて、どの方法で測り、得られたデータをどう処理するかを考える必要があります。
これは医療に限らず、物体を壊さずに内部を調べる非破壊計測やリモートセンシングなどにもつながる考え方です。
現在も進む医用超音波の研究
炭准教授は、現在も医用超音波を中心とした研究開発を進めています。
近年の研究では、乳房や甲状腺、腹部臓器などを対象とした3次元医用超音波の信号処理や、LEDを光源とする光超音波を利用した生体組織・血流などの計測に関する研究にも取り組んでいます。
さらに、超音波画像に対してAIを利用する研究も行われています。
従来から研究されてきた超音波計測と、デジタル信号処理、数値解析、AIなどを組み合わせながら、計測・可視化の方法そのものを発展させていることが分かります。
高校の物理・数学・情報からどうつながる?
炭准教授の研究は、高校で学ぶ物理とのつながりが非常に見つけやすい分野です。
物理では、波、振動、周波数、電磁気、熱などを学びます。これらは、超音波、電磁波、温度計測などを理解するための基礎につながります。
数学では、関数やベクトル、微分・積分などが、現象を数式で表現したり、測定データを解析したりするための基礎になります。
さらに「情報」で学ぶデジタルデータやプログラミングも、計測した信号をコンピュータで処理し、画像や数値として表現する世界につながります。
「物理が好きだけれど、大学では何に使えるのだろう」と感じている高校生にとっても、物理現象を利用して情報を取得するという考え方は興味深い入口になるでしょう。
情報理工学科で医療を研究する意味
「医療に興味があるなら医学部では?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、医療を支えるためには、診断装置、センサ、画像処理、信号処理、数値解析など、さまざまな工学技術も必要です。
炭准教授の研究は、医師として病気を診断・治療するのではなく、工学や情報科学の立場から、計測・画像診断・治療を支える技術を研究するものです。
上智大学 理工学部 情報理工学科で学べる情報科学が、人間の身体を対象とした生体医工学にも広がっていることが分かります。
推薦入試では「医療に貢献したい」の先を考えよう
医療と工学の融合分野に興味がある人は、「将来は技術で医療に貢献したい」という思いを持っているかもしれません。
そこからもう一歩進んで、「どのような技術に興味があるのか」を考えてみましょう。
たとえば、「なぜ超音波で体の中が見えるのだろう」「体を傷つけずに組織の硬さを測るにはどうすればよいのだろう」「測定した信号から、見えない内部の状態をどう推定するのだろう」といった疑問があります。
高校物理で波を学んだ経験から超音波へ興味を広げることもできますし、画像処理やAIへの興味から医用画像へ進むこともできます。
「医療に役立ちたい」という目的と、「工学として何を知りたいのか」という問いをつなげていくことが大切です。
「見えないものを測る」情報理工学

炭親良准教授の研究を見ていくと、情報理工学がコンピュータの画面の中だけで完結する学問ではないことが分かります。
超音波や電磁波などの物理現象を利用して信号を取得し、そのデータを数学や信号処理によって解析し、直接見ることのできない体内の状態を推定・可視化する。
そこには、物理、数学、情報科学、工学、そして医療との接点があります。
上智大学 理工学部 情報理工学科を志望している人は、「AIを学ぶ」「プログラミングを学ぶ」だけでなく、「情報技術を使って、見えない現象をどう測るのか」という視点からも研究分野を調べてみてください。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。
※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。


