上智大学外国語学部英語学科で文化心理学や多文化共生について学ぶイメージ

上智大学 外国語学部 英語学科|あなたにも「特権」がある?出口真紀子教授の差別の心理学

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。今回のテーマは、上智大学外国語学部英語学科の出口真紀子教授についてご紹介します。

皆さんは、「特権」という言葉を聞いて、どのようなことを思い浮かべますか。

お金持ちであることや、社会的に高い地位にいること、特別な権利を持っていることなどを想像するかもしれません。

しかし、心理学や社会学などの分野で使われる「特権」という言葉には、もう少し広い意味があります。

例えば、ある社会の中で多数派に属していることで、本人が意識しないまま得ている有利さも、特権として考えられることがあります。

自分にとって当たり前の環境が、別の立場の人にとっては当たり前ではないかもしれません。

出口真紀子教授は、文化心理学の立場から、マジョリティの特権や差別の心理、多文化共生などについて研究しています。

今回は、出口教授の研究内容や担当授業、ゼミの特色を通して、差別や偏見の問題を心理学の視点から考える面白さをご紹介します。


出口真紀子教授のプロフィール

出口真紀子教授は、上智大学外国語学部英語学科に所属し、文化心理学や特権と差別の心理学などを専門とする研究者です。

主な研究分野には、文化心理学、特権と差別の心理学、文化変容のプロセス、多文化共生、文化と自己観、人種的アイデンティティの発達などがあります。

文化心理学とは、人間の考え方や感情、行動が、文化や社会的な環境とどのように関係しているのかを研究する学問です。

例えば、同じ出来事を経験しても、育ってきた文化や社会的な背景によって、受け止め方が異なる場合があります。

また、自分自身をどのような存在として理解するのかという自己観も、文化や社会との関わりの中で形成されます。

出口教授の研究では、こうした文化と心理の関係を踏まえながら、差別や偏見、社会的な不平等について考えます。

英語学科というと、英語の運用力や英語圏の文学、歴史などを学ぶイメージがあるかもしれません。

しかし、英語を通して異なる文化や社会を理解するためには、人々の心理や社会的な立場について考えることも重要です。

出口教授の研究は、英語学科で学べる分野の幅広さを示しています。

大学で文化心理学や多文化社会について学ぶ学生のイメージ

研究テーマ① 文化心理学とは?文化と心の関係を考える

出口教授の研究を理解するうえで重要なのが、文化心理学という分野です。

私たちは普段、自分の考え方や行動を、自分自身の性格や意思によるものだと考えることがあります。

しかし、人間の考え方や行動には、育ってきた社会や文化の影響も関わっています。

例えば、学校で意見を発表するとき、自分の考えを積極的に主張することが重視される環境もあれば、周囲との調和を大切にすることが重視される環境もあります。

もちろん、同じ文化の中で育った人が、すべて同じ考え方をするわけではありません。

それでも、社会の中で共有されている価値観や習慣が、人々の行動に影響を与えることがあります。

文化心理学では、こうした文化と心理の関係を研究します。

また、異なる文化的な背景を持つ人々が出会ったときに、どのような心理的な変化が生まれるのかという問題も重要です。

例えば、留学や海外生活を経験すると、それまで当たり前だと思っていた習慣や価値観を見直すことがあります。

その経験を通して、自分自身の文化や考え方について新たな発見をすることもあるでしょう。

文化心理学は、異文化理解だけでなく、自分自身を理解するための手がかりにもなる学問です。


研究テーマ② 「特権」とは何か?見えにくい有利さを考える

出口教授の研究の中心的なテーマの一つが、マジョリティの特権です。

マジョリティとは、ある社会や集団の中で多数派、あるいは社会的に優位な立場にある人々を指す際に使われる言葉です。

一方、マイノリティとは、人数の少なさだけでなく、社会的な力関係の中で不利な立場に置かれる人々を指す場合があります。

ここでいう特権とは、ある社会の中でマジョリティ側にいることで、本人が意識しないまま得ている有利さを意味します。

例えば、学校や公共施設などで、自分が日常的に使う言語による案内が十分に用意されている場合を考えてみましょう。

その環境に慣れている人は、案内を理解できることを特別なことだとは感じないかもしれません。

しかし、その言語を十分に理解できない人にとっては、必要な情報を得ることが難しい場合があります。

このように、自分にとって当たり前の環境が、ほかの人にとっては必ずしも当たり前ではないことがあります。

特権について考えることは、誰かを一方的に責めることではありません。

社会の中で、どのような人が有利な立場に置かれ、どのような人が困難を経験しやすいのかを理解するための視点です。

出口教授の研究では、こうした見えにくい特権を可視化することが、差別や不平等を考える出発点として重視されています。


研究テーマ③ なぜ人は差別に無自覚でいられるのか

出口教授の研究で特に興味深いのが、マジョリティ側にいる人々が、なぜマイノリティの人々が経験する差別や不平等に気づきにくいのかという問いです。

差別というと、誰かが明確な悪意を持って他者を傷つける行為を思い浮かべるかもしれません。

もちろん、意図的な差別や偏見は重要な問題です。

しかし、社会の中には、個人が差別するつもりで行動していなくても、特定の人々が不利な状況に置かれる仕組みが存在する場合があります。

例えば、ある制度が多数派の人々の生活を前提として設計されている場合、少数派の人々にとって利用しにくいことがあります。

その制度を問題なく利用できる人は、困難が存在していること自体に気づかないかもしれません。

このような問題を考える際には、個人の意識だけでなく、社会の仕組みや制度にも目を向ける必要があります。

また、人は自分自身の経験を基準にして、ほかの人の状況を判断してしまうことがあります。

そのため、自分が経験していない困難については、想像することが難しい場合もあります。

出口教授の研究は、こうした無自覚さがどのように生まれるのかを考え、社会的な不平等への理解を深めることにつながっています。

社会問題や多文化共生について資料を読みながら考える高校生のイメージ

研究テーマ④ 社会的公正とは?差別のない社会を考える

出口教授の教育活動では、社会的公正という考え方も重要なテーマです。

社会的公正は、英語でSocial Justiceと表現されます。

社会的公正とは、人々が社会の中で不当に差別されたり、機会を奪われたりすることなく、尊厳や権利を尊重される社会のあり方を考える概念です。

例えば、教育を受ける機会について考えてみましょう。

すべての子どもに同じ教材を配ることは、一見すると平等に見えるかもしれません。

しかし、子どもたちの言語環境や学習上の必要性が異なる場合には、同じ教材だけでは十分に学べないことがあります。

そのような場合には、それぞれの状況に応じた支援を考える必要があります。

社会的公正について考える際には、全員を同じように扱うことと、一人ひとりが必要な機会を得られるようにすることの違いにも目を向けます。

また、社会の中でどのような人々の声が届きやすく、どのような人々の声が届きにくいのかを考えることも重要です。

出口教授の研究や教育活動では、社会的な課題について理解を深めるだけでなく、その理解を行動につなげることも重視されています。


研究テーマ⑤ 多文化共生とアイデンティティ

出口教授の研究分野には、多文化共生や人種的アイデンティティの発達なども含まれています。

多文化共生とは、異なる文化的な背景を持つ人々が、互いの違いを尊重しながら社会の中で共に暮らしていくことを考える概念です。

例えば、日本で暮らす人々の中には、さまざまな国や地域にルーツを持つ人がいます。

また、家庭で使う言語や文化的な習慣が、学校や地域社会の多数派とは異なる場合もあります。

こうした環境では、言語や文化の違いが、生活の中での困難につながることもあります。

一方で、異なる文化的な背景を持つ人々が交流することで、新しい価値観や考え方に触れる機会も生まれます。

また、アイデンティティとは、自分自身をどのような存在として理解しているのかという自己認識に関わる概念です。

人は、家族や友人、学校、地域社会などとの関わりの中で、自分自身についての理解を深めていきます。

文化や人種、言語などに関わる経験が、アイデンティティの形成に影響する場合もあります。

出口教授の研究では、こうした人々の経験や心理的な変化を理解することも重要なテーマとなっています。


担当授業|文化心理学から「立場の心理学」まで

出口教授の教員紹介資料では、文化心理学や差別の心理学、質的研究などに関する科目が紹介されています。

主な担当科目として、次のようなものが挙げられます。

  • 文化心理学1・2(Cultural Psychology 1 & 2)
  • 差別の心理学(Psychology of Discrimination)
  • English Skills B-1・B-2
  • 心理学の質的調査法(Seminar in Qualitative Research Methods in Psychology)
  • 立場の心理学1:マジョリティの特権を考える
  • 立場の心理学2:特権の自覚と行動をつなぐ

文化心理学では、文化と人間の心理の関係について学ぶことができます。

また、差別の心理学では、偏見や差別がどのように生まれ、社会の中で維持されるのかを考えることができます。

心理学の質的調査法では、人々の経験や考え方を調べるための研究方法について学びます。

さらに、立場の心理学は、全学共通科目として紹介されている授業です。

マジョリティの特権について考え、その自覚を行動につなげることをテーマとしています。

英語学科の専門科目だけでなく、学部を越えた学びにも関わっている点が特徴です。

なお、担当科目や開講状況、履修条件は年度によって変更される場合があります。最新の履修情報を確認してください。


出口ゼミの特色|インタビュー調査で人々の経験に迫る

出口教授のゼミでは、質的調査法を学びながら、社会的公正や文化心理学、異文化理解、多文化共生などに関する研究を進めます。

質的調査とは、人々の経験や考え方、社会的な状況などを、インタビューや観察、文章資料などを通して詳しく調べる方法です。

例えば、異なる文化的な背景を持つ人々が、学校や地域社会でどのような経験をしているのかを調べる場合を考えてみましょう。

アンケートで数値を集めるだけでは、その人がどのような気持ちで経験を受け止めているのかを十分に理解できない場合があります。

そこで、本人にインタビューを行い、経験や考え方について詳しく話を聞く方法があります。

また、インタビューで得られた内容を分析することで、人々の経験に共通する特徴や、異なる背景による違いを考えることができます。

出口ゼミでは、こうした研究方法を学びながら、学生がそれぞれの関心に基づいて研究を進めます。

人々の経験を丁寧に理解しようとする姿勢は、多文化共生や社会的公正について考えるうえでも重要です。

大学のゼミで文化心理学や社会的公正について議論する学生のイメージ

ゼミではどのように研究を進めるの?

出口教授のゼミ紹介資料では、3年生から4年生にかけて、段階的に研究を進める流れが紹介されています。

3年生では、先行研究を読みながら、自分の関心のあるテーマを掘り下げていきます。

先行研究とは、これまでにほかの研究者が行ってきた研究のことです。

自分が研究したいテーマについて、すでにどのようなことが明らかになっているのかを調べることで、研究の方向性を考えることができます。

また、3年生の後期には、インタビュー調査などによるデータ収集を始める流れが紹介されています。

インタビュー調査では、質問の内容や調査対象者への配慮、個人情報の取り扱いなどについて慎重に考える必要があります。

特に、差別やアイデンティティなどのテーマでは、調査に協力する人の経験や気持ちを尊重することが重要です。

4年生では、集めたデータを分析し、論文の作成に取り組みます。

調査で得られた内容を整理し、先行研究と比較しながら、自分の研究で明らかになったことを考察します。

こうした研究の経験は、資料を調べる力や、人の話を丁寧に聞く力、自分の考えを論理的にまとめる力を育てることにつながります。


高校生活の中にも「特権」を考えるきっかけがある

出口教授の研究分野は、高校生活の中で経験するさまざまな出来事ともつながっています。

例えば、学校のルールや行事について考えてみましょう。

多くの生徒にとって問題なく参加できる行事でも、身体的な条件や文化的な背景、家庭の事情などによって、参加しにくい人がいる場合があります。

そのとき、参加できない理由を本人の努力不足として捉えるのではなく、学校の仕組みや環境に改善できる点がないかを考えることができます。

また、普段の会話の中で、ある集団について決めつけた表現を使ってしまうことがあるかもしれません。

そのような言葉が、相手にどのような影響を与えるのかを考えることも重要です。

さらに、海外留学や国際交流の経験がある人は、自分が少数派の立場になったときに、言語や文化の違いによる困難を感じたことがあるかもしれません。

反対に、日本で生活しているときには、自分が多数派の立場にいることを意識する機会が少ない場合もあります。

こうした経験を振り返ることで、自分自身の立場や、社会の中にある見えにくい不平等について考えることができます。


推薦入試を目指す高校生へ|社会への疑問を学問的な問いにつなげよう

上智大学外国語学部英語学科の推薦入試を考えている皆さんは、差別や偏見、多文化共生への関心を、大学で何を学びたいのかという問いと結びつけて考えてみましょう。

例えば、差別や偏見に関するニュースを見て、なぜこのような問題が起きるのか疑問を持った経験があるかもしれません。

その場合、個人の意識だけでなく、社会の制度や文化的な背景がどのように関わっているのかを調べることができます。

また、留学や国際交流を通して、自分が少数派の立場になった経験がある人は、そのときに感じた困難や気づきを振り返ってみるとよいでしょう。

反対に、自分が多数派の立場にいることに気づいた経験がある人は、その立場がどのような有利さにつながっているのかを考えることもできます。

さらに、多文化共生や人権に関する活動に参加した経験がある場合には、その活動を通してどのような疑問や課題を感じたのかを整理することができます。

大切なのは、「差別はよくない」「多文化共生が大切だ」という一般的な考えだけで終わらせず、具体的にどのような問題を研究したいのかを考えることです。

例えば、「なぜ人は自分が持つ特権に気づきにくいのか」「社会の中で差別や不平等を減らすためには、どのような意識や制度の変化が必要なのか」といった問いを持つことができます。

また、英語学科で学ぶ意味についても考えてみましょう。

英語を通して海外の研究や社会的な議論に触れることで、日本だけでは得られない視点から差別や多文化共生について考えることができます。

教員の研究内容を知ることは、英語学科で学べる分野を理解するための一つの方法です。ただし、特定の教員に関心を持つことが推薦入試で有利になるわけではなく、入学後に必ずその教員のゼミに所属できるとも限りません。


まとめ|自分の立場を見つめ直すことから社会を考える

出口真紀子教授は、文化心理学の立場から、マジョリティの特権や差別の心理、多文化共生、アイデンティティなどについて研究しています。

差別や不平等の問題を考える際には、個人の意識だけでなく、社会の制度や文化的な背景にも目を向けることが重要です。

また、自分自身がどのような立場にいるのかを考えることで、これまで気づかなかった社会の仕組みや、ほかの人々が経験している困難について理解を深めることができます。

出口教授のゼミでは、質的調査法を学びながら、インタビュー調査などを通して人々の経験やアイデンティティについて研究することができます。

文化心理学や多文化共生に関心がある方、差別や偏見の問題を心理学の視点から考えたい方、社会的公正について学びたい方は、出口教授の研究をきっかけに、文化心理学や差別の心理学という分野について調べてみてはいかがでしょうか。

KOSSUN教育ラボでは、上智大学の推薦入試を目指す高校生に向けて、出願書類の準備や面接対策などのサポートを行っています。受験準備についてお悩みの方は、お気軽に無料個別相談をご利用ください。

※本記事は、提供された記事案をもとに作成しています。教員の所属・職位・研究内容・担当科目・ゼミの活動内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご確認ください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。