
上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|高橋浩教授の高速光ファイバ通信・光集積回路研究とは
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 情報理工学科の高橋浩教授と、高速光ファイバ通信・光集積回路の研究」です。
動画を見る、SNSで写真を送る、オンライン会議をする、クラウド上のデータを利用する。私たちが毎日利用しているデジタルサービスの背景では、大量のデータが情報通信ネットワークを通じて運ばれています。
その重要な基盤となっているのが光ファイバ通信です。高橋浩教授は、光の性質と通信理論、デジタル信号処理などを組み合わせ、さらに高速な光通信を実現するための研究に取り組んでいます。
高橋浩教授はどんな研究者?

高橋浩教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、次世代の高速光ファイバ通信を実現する通信方式と光部品を研究しています。
東北大学で工学士、工学修士、博士(工学)の学位を取得し、1988年から2012年まで日本電信電話株式会社の研究所で、光導波路を用いた通信用集積光回路の研究に携わりました。2013年からは上智大学 理工学部 情報理工学科で、超高速光通信方式に関する研究を進めています。
研究キーワードには、変復調、光集積回路、光信号処理、光ファイバ通信などが挙げられています。
光という物理現象を理解するだけではなく、それを「どう使えばより多くの情報を送れるのか」という情報通信の問題へ結びつけているところが、高橋教授の研究の特徴です。
そもそも光ファイバ通信とは?
光ファイバは、非常に細いガラスなどを通して光を伝える仕組みです。情報を光信号に変換し、遠くまで高速に送ることができます。
私たちがインターネットを利用するとき、画面上では文字や画像、動画として見えていますが、それらはデジタルデータとして通信ネットワークを流れています。
高橋教授の研究室では、光ファイバを流れるデジタルデータをさらに高速に伝送するための技術を研究しています。
「光を速くする」というより、光にどのように情報を載せ、どのように受け取れば、一度により多くのデータを効率よく伝えられるのかを考える研究だと捉えると分かりやすいでしょう。
光のオン・オフだけで情報を送る方法には限界がある

従来の光ファイバ通信では、レーザー光をオン・オフすることで、デジタル信号の「1」と「0」を表現する方法が使われてきました。
たとえば「光っている状態を1、光っていない状態を0」と考えれば、仕組みをイメージしやすいでしょう。
しかし、通信するデータ量が増え続ければ、単純に光をオン・オフするだけでは高速化に限界があります。
そこで重要になるのが、光が持っている別の性質も利用して情報を表現するという考え方です。
「多値変調」で一つの信号に複数ビットを載せる
高橋教授の研究を理解する重要なキーワードが「多値変調」です。
光には強さだけではなく「位相」と呼ばれる性質があります。この位相などを情報に応じて変化させることで、一つの信号に複数ビットの情報を含めることができます。
単純なオン・オフで二つの状態を区別するだけではなく、より多くの状態を使って情報を表現するイメージです。
高橋教授の研究室では、光変調器に与える信号を工夫することで、効率よく高速な光信号を生成するための新しい変調方法などを研究しています。
通信速度を上げるためには、単に装置を高速で動かすだけではなく、「情報そのものをどのような形で光に載せるか」を工夫することも重要なのです。
送るだけでなく「受け取る技術」も必要
通信では、情報を送る技術だけを研究すればよいわけではありません。
複雑な方法で光に情報を載せた場合、受信側では、その光信号から元の情報を正しく取り出す必要があります。情報を信号へ変換することを「変調」、受け取った信号から情報を取り出すことを「復調」と呼びます。
高橋教授の研究室では、変調方式だけではなく、復調に必要となる特殊な集積光回路などについても研究しています。
「どう送るか」と「どう受け取るか」をセットで考えることが、高速な情報通信を実現するうえでは欠かせません。
「光集積回路」とは?
高橋教授のもう一つの重要な研究分野が「光集積回路」です。
電子回路では電気信号をさまざまな部品によって処理しますが、光集積回路では光を導くための細い通り道である「光導波路」などを一つの基板上に構成し、光信号を処理します。
高橋教授は、NTTの研究所時代から光導波路を使った通信用集積光回路を研究してきました。
代表的な成果の一つが、AWGと呼ばれるアレイ導波路回折格子に関する研究です。これは、異なる波長の光を分離するための光学素子で、波長の異なる複数の光信号を一本の光ファイバで扱う波長多重通信の発展にもつながった技術です。
この研究成果は実用化にもつながり、高橋教授はAWGに関する研究成果によって前島密賞や英国のRank賞を受賞しています。
光のまま情報を処理する
光通信で送られてきた信号を処理するとき、光をいったん電気信号に変換する方法があります。一方、光信号をできるだけ光のまま処理できれば、新しい通信システムやデバイスにつながる可能性があります。
高橋教授は、光信号処理回路や変調器、高周波回路、制御回路などを組み合わせ、新しい送信機や受信機の構成を研究しています。
現在の研究では、超高速デジタル光通信を高効率化するための新しい変調方式に加え、光ファイバを利用したモバイルネットワーク用ミリ波無線信号の伝送方法や、光通信技術を他分野へ応用する可能性なども研究されています。
光ファイバ通信という一つの分野の中にも、光の物理、デバイス、電子回路、信号処理、通信方式など、さまざまな研究テーマが存在しているのです。
高校物理の「波」が最先端通信につながる

高橋教授の研究は、高校物理で学ぶ「波」と深くつながっています。
高校では、波長、周波数、振幅、位相などを学びます。試験では波形を見ながら計算することが多いかもしれませんが、大学ではこうした光の性質を実際の情報通信へ利用する方法を考えていきます。
特に「位相」は、多値変調を理解するうえで重要です。
また、高校数学で学ぶ三角関数や複素数、ベクトルなども、大学で波や信号を数理的に扱っていく際の基礎につながります。
さらに情報分野では、デジタルデータや信号処理、通信ネットワークについての理解も必要になります。物理、数学、情報が一つの研究テーマの中で交わるところに、光通信研究の面白さがあります。
なぜ情報理工学科で「光」を研究するの?
情報理工学科と聞くと、AIやプログラミングをイメージする人も多いでしょう。しかし、情報を扱うためには、その情報を遠くへ運ぶ技術も必要です。
どれほど高度なAIやクラウドサービスがあっても、大量のデータを安定して高速にやり取りする通信ネットワークがなければ利用できません。
上智大学 理工学部 情報理工学科では、情報通信も重要な研究領域の一つです。
高橋教授の研究は、ソフトウェアの中で情報を処理する研究とは異なり、「情報をどのような物理的な信号として表現し、どう高速に運ぶのか」という情報社会の基盤部分を扱っています。
推薦入試では「通信が速くなると便利」から一歩先へ
推薦入試で情報通信に興味がある人は、「高速なインターネットを実現したい」というところから、さらに疑問を具体化してみましょう。
たとえば、「なぜ光ファイバは大量の情報を送れるのだろう」「光のオンとオフ以外に情報を表現する方法はあるのだろう」「同じ一本の光ファイバで、より多くの情報を送るにはどうすればよいのだろう」といった問いがあります。
動画配信やオンラインゲームを利用していて通信速度に興味を持った経験から、その裏側にある光ファイバやデータ伝送の仕組みを調べてみるのもよいでしょう。
高校生の段階で光通信の専門知識を身につけている必要はありません。身近な通信サービスへの関心から、「そもそもデータはどうやって遠くまで届いているのか」と問いを深めていくことが大切です。
「光」と「情報」がつながる研究

高橋浩教授の研究を見ていくと、情報理工学がコンピュータのプログラムだけを扱う学問ではないことがよく分かります。
光の位相を利用した変調方式、光信号処理、光集積回路、光ファイバ通信など、光という物理現象を利用しながら、より多くの情報を高速に届ける方法を追究しています。
上智大学 理工学部 情報理工学科を志望している人は、AIやデータサイエンスだけではなく、「情報を届ける仕組み」にも目を向けてみてください。高校で学んでいる物理や数学が、世界中をつなぐ情報通信技術へどのようにつながっていくのかを考えるきっかけになるでしょう。
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※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。

