
上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|田村恭久教授の教育工学・学習分析研究とは
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 情報理工学科の田村恭久教授と、教育工学・学習分析の研究」です。
同じ授業を受けていても、理解しやすい学び方や、つまずくポイントは人によって異なります。では、学習中の行動をデータとして捉えることで、よりよい学習方法や教育環境を考えることはできないのでしょうか。
情報通信技術を教育や学習の現場へ応用し、「人はどのように学ぶのか」「ICTによって学びをどう支援できるのか」を研究しているのが田村恭久教授です。
田村恭久教授はどんな研究者?

田村恭久教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、教育工学やeラーニング技術を専門としています。
上智大学で工学士、工学修士、博士(工学)の学位を取得し、教育と情報技術を結びつけた研究を続けています。
研究キーワードには、マルチモーダル学習分析、教育の情報化、学習分析、アクティブラーニングなどが挙げられています。
コンピュータを教育現場へ導入すること自体を目的とするのではなく、学習者がどのように学び、その過程をどのように捉え、よりよい学習支援へつなげられるのかを考えるところが研究の重要なポイントです。
「教育工学」ってどんな学問?
教育工学とは、教育や学習に関する課題を、情報技術やデータ分析なども利用しながら研究する分野です。
たとえば、オンライン教材を用意しただけで、すべての人が効果的に学習できるとは限りません。
どこで学習者がつまずいているのか、どのような教材の提示方法が適しているのか、グループ学習ではどのようなコミュニケーションが行われているのかなど、さまざまな角度から学習を考える必要があります。
そこで、学習者の行動や学習履歴をデータとして収集・分析し、教育方法や学習支援のあり方を検討します。
教育学と情報科学の両方にまたがるところに、教育工学の特徴があります。
「自分の学び方」を理解するメタ認知

田村教授が研究するテーマの一つに、学習者のメタ認知能力の獲得支援があります。
メタ認知とは、自分自身の考え方や学習状況を一段高いところから捉えるような考え方です。
たとえば、試験勉強をしていて「ここは理解できている」「この単元は覚えたつもりだったけれど説明できない」「この勉強方法では効率が悪そうだ」と自分の状態を振り返ることがあります。
こうした自分自身の学習状況を把握し、必要に応じて学習方法を調整する力は、学びを考えるうえで重要です。
情報技術を利用して学習者の活動を記録したり振り返りを支援したりすることで、メタ認知をどのように支えられるのかを考えることも教育工学の研究テーマになります。
アクティブラーニングや協調学習をどう支援する?
田村教授は、アクティブラーニングや協調学習に関する研究にも取り組んでいます。
アクティブラーニングでは、先生の説明を聞くだけではなく、学習者自身が考えたり、議論したり、課題に取り組んだりします。
協調学習では、複数の学習者が意見を出し合いながら、一緒に問題について考えていきます。
しかし、単にグループをつくって話し合わせれば、必ず学習が深まるわけではありません。発言が一部の人に偏ることもあれば、議論が課題から離れてしまうこともあります。
そこで、「学習者同士がどのようにやり取りしているのか」「どのような支援があれば協調的な学習を進めやすいのか」をデータやシステムを通じて考えていきます。
「学習分析」で学びをデータとして見る

田村教授の重要な研究キーワードが「学習分析」です。
オンライン教材を利用すると、教材を開いた時間、問題に取り組んだ回数、回答状況、操作履歴など、さまざまなデータを記録できます。
こうした学習活動に関係するデータを分析することで、学習の過程について考えるのが学習分析です。
ただし、データを集めれば学習者の理解度が自動的にすべて分かるわけではありません。
たとえば、「教材を長時間開いていた」というデータだけを見ても、集中して学習していたのか、難しくて止まっていたのかは分かりません。
どのデータを使い、そこから何を推定できるのかを慎重に考えること自体が研究になります。
マルチモーダル学習分析とは?
そこで注目したいのが「マルチモーダル学習分析」です。
マルチモーダルとは、複数の種類の情報を組み合わせるという意味です。
学習を分析するとき、テストの点数やコンピュータの操作ログだけでは、学習中に起きていることの一部分しか分からない場合があります。
そこで、音声、映像、発話、操作ログなど、異なる種類のデータを組み合わせ、学習者の活動をより多角的に捉えようとします。
たとえばグループ学習なら、「誰が何回発言したか」という量だけではなく、どのようなやり取りが行われたのかなど、複数の情報から学習活動を考えることができます。
人間の学びという複雑な現象を、一種類の数字だけで判断しないところが重要です。
オンラインでも「学びの途中」を支える
田村教授は、オンライン環境でのアクティブラーニングや形成的評価などについても研究しています。
形成的評価とは、学習がすべて終わった後に点数をつけるだけではなく、学習の途中で理解状況などを確認し、その後の学習につなげていく考え方です。
たとえば小テストを受け、その結果から理解できていない部分を確認して復習することも、身近なイメージの一つです。
オンライン学習では、学習者と教員が同じ教室にいない場合もあります。その中で、どのように学習状況を把握し、どのようなタイミングで支援やフィードバックを行うのかは重要な課題になります。
情報技術を利用することで、オンラインだからこそ取得できる学習履歴を教育へどう生かすのかという研究にもつながります。
AIがあれば「一人ひとりに最適な教育」ができる?
生成AIの普及によって、「AIを使えば一人ひとりに最適な教育を提供できるのではないか」と考える人もいるでしょう。
しかし、学習者の状態を正確に把握すること自体が簡単ではありません。
同じ間違いをした二人でも、問題文を読み違えたのか、前提となる知識が不足しているのか、計算ミスをしたのかでは、必要な支援が異なります。
そのため、教育でAIやデータを活用するときには、「何をデータとして捉えるのか」「そのデータからどこまで判断できるのか」を考える必要があります。
さらに、学習履歴などを扱う場合には、プライバシーやデータの適切な利用についても考えなければなりません。
新しい技術を導入するだけではなく、人間の学びそのものを理解しようとする視点が重要なのです。
高校の「情報」とどうつながる?

田村教授の研究は、高校の「情報」で学ぶ内容ともつながっています。
たとえば、データを収集し、整理・分析して意味を読み取る「データ活用」は、学習分析を考えるための入口になります。
プログラミングを使って学習支援システムをつくることもできますし、ネットワークや情報社会についての知識はオンライン教育を考えるうえでも重要です。
また、「データから分かることと分からないことを区別する」という考え方も欠かせません。
情報理工学では、コンピュータに処理させる方法だけではなく、得られた結果をどう解釈し、人間の活動へどう生かすのかまで考えていきます。
推薦入試では自分自身の「学習経験」も研究の入口になる
教育工学に興味がある人は、自分自身の学校生活や受験勉強を振り返ってみると、研究につながる疑問を見つけやすいでしょう。
たとえば、「動画授業だと理解しやすい単元と、教室で質問したほうが理解しやすい単元があるのはなぜだろう」「グループワークで議論が深まるときと深まらないときには、どのような違いがあるのだろう」といった問いがあります。
また、「学習アプリはどのようなデータから復習問題を選んでいるのだろう」「生成AIを勉強に使うと、自分で考えることにどのような影響があるのだろう」と考えてみてもよいでしょう。
「教育に興味がある」「AIに興味がある」で終わらず、自分の経験から疑問を見つけ、調べていくことで、情報理工学科で学びたいことを具体化しやすくなります。
「人はどう学ぶのか」を情報技術から考える
田村恭久教授の研究を見ていくと、教育工学は単に授業をデジタル化するための研究ではないことが分かります。
メタ認知、アクティブラーニング、協調学習、学習分析、マルチモーダルデータなどを通じて、人間の学習という複雑な活動を捉え、情報技術によってどのように支援できるのかを考えています。
上智大学 理工学部 情報理工学科を志望している人は、AIやプログラミングだけでなく、「情報技術を使って人間の学びをどう支えるか」という研究にも注目してみてください。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。
※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。


