上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|矢入郁子教授のAI・行動センシング研究とは

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。

今回のテーマは、

「上智大学 理工学部 情報理工学科の矢入郁子教授と、AI・行動センシングの研究」です。

スマートフォンやスマートウォッチには、加速度や位置、身体に関係する情報などを取得できるさまざまなセンサが搭載されています。では、こうした大量のデータから、人が今どのような状態にあるのかをコンピュータが認識するには、どのような技術が必要なのでしょうか。

矢入郁子教授は、知能情報学、知覚情報処理、ヒューマンインタフェースなどを専門とし、機械学習や深層学習を利用した行動センシングをはじめ、さまざまなデータを情報科学によって分析する研究に取り組んでいます。


矢入郁子教授はどんな研究者?

矢入郁子教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、知能情報学、知覚情報処理、ヒューマンインタフェースなどを研究しています。

東京大学で工学を学び、博士(工学)の学位を取得しています。その後、通信総合研究所などで研究に携わり、2008年に上智大学 理工学部へ着任しました。

研究テーマには、深層学習を用いた行動センシング、生体計測データなどの時系列データ認識、ブレイン・マシン・インタフェース、機械学習を利用したデータ解析などがあります。

扱う対象は幅広いものの、そこには「現実世界から得られた複雑なデータを、情報技術によってどのように認識・分析するか」という共通する視点があります。


「行動センシング」とは?

矢入教授の研究を理解するうえで注目したいのが「行動センシング」です。

私たちの行動は、そのままではコンピュータが理解できるデータではありません。

そこでセンサなどを使い、人の動きや状態に関係する情報を数値として取得します。そして、そのデータに現れる特徴を分析することで、人の行動や状態を認識しようとします。

たとえば、センサから「0.8、1.2、0.5……」という数値が得られたとしても、それだけを見て何をしているのかは簡単には分かりません。

大量のデータの中から特徴を見つけ、「このようなデータの変化は、この行動と関係しているのではないか」と考える必要があります。

そこで機械学習や深層学習などの情報処理技術が利用されます。


深層学習はデータから何を見つける?

深層学習は、機械学習の手法の一つです。

大量のデータから特徴やパターンを学習し、画像認識、音声認識、時系列データの分析など、さまざまな問題に利用されています。

ただし、「データをAIに入れれば自動的に正しい答えが出る」というわけではありません。

どのようなデータを使うのか、何を認識させるのか、どのように性能を評価するのかによって結果は変わります。

特に人間に関するセンシングでは、同じ行動でも人によってデータの現れ方が異なることがあります。実際の環境にはノイズも含まれます。

現実世界の複雑なデータを、どのように機械学習で扱える形にするのかも重要な研究課題です。


「時系列データ」をAIで分析する

矢入教授の研究では、時系列データも重要な対象です。

時系列データとは、時間の順番に沿って記録されたデータのことです。

たとえば心拍数を一定の間隔で測定したデータや、センサから連続的に得られる測定値などが時系列データです。

一つの時点の数字だけを見るのではなく、「どのように変化してきたのか」を見ることで、データの特徴が分かる場合があります。

機械学習を使って時系列データを認識する場合にも、時間的な変化をどのように捉えるかが重要になります。

高校数学で学ぶ関数や数列、統計なども、時間とともに変化するデータを考えるための基礎につながっています。


ブレイン・マシン・インタフェースとは?

矢入教授の研究テーマには、ブレイン・マシン・インタフェースもあります。

ブレイン・マシン・インタフェースは、脳活動に関係する信号を計測・解析し、人とコンピュータや機械との新しい情報伝達方法を考える研究領域です。

脳から得られる信号にはさまざまな情報が含まれますが、計測した信号をそのまま見ただけで人間の意図が分かるわけではありません。

どの部分に意味のある特徴があるのかを調べ、信号処理や機械学習などを利用して解析する必要があります。

ブレイン・マシン・インタフェースは支援技術などとの接点も研究されている分野ですが、脳信号から人の考えていることを何でも読み取れる技術という意味ではありません。

人間と情報機器との関係を考える「ヒューマンインタフェース」の一つとして、脳と機械の間でどのような情報のやり取りが可能なのかを研究する分野です。


AIは異なる分野のデータにも使える

矢入教授の研究の特徴の一つは、情報処理の対象となるデータが一種類に限定されていないことです。

人の行動や生体情報だけでなく、通信などから得られる時系列データや、生命科学に関係するデータなど、さまざまな対象について情報科学的な分析を行う研究があります。

一見するとまったく異なる研究対象でも、「大量のデータの中からどのように特徴を見つけるか」「どのようなモデルで分類・認識するか」という情報科学の問題として見ると共通点があります。

これが、AIやデータ解析が幅広い研究分野と結びつく理由の一つです。


微生物叢のデータを情報科学から見る

矢入教授が取り組んできたテーマには、微生物叢に関係するデータ解析もあります。

微生物叢とは、ある環境に存在するさまざまな微生物の集まりです。人間の体内や自然環境などにも多様な微生物が存在しています。

こうした研究では、多数の種類の微生物に関する複雑なデータを扱うことがあります。

そこで情報科学の視点から、データの特徴や関係性をどのように捉えるのかという問題が生まれます。

ただし、データ解析によって健康状態や病気を自動的に判断できるという意味ではありません。

生命科学のデータを扱う場合にも、データの意味や限界を理解したうえで、適切な分析方法を考える必要があります。


深層強化学習とは?

矢入教授の研究テーマには、深層強化学習を利用した研究もあります。

強化学習は、ある環境の中で行動し、その結果として得られる評価を参考にしながら、よりよい行動の選び方を学習していく機械学習の考え方です。

深層学習と組み合わせたものが、一般に深層強化学習と呼ばれます。

設計問題などに利用する場合には、多数の候補の中からどのような選択をすればよりよい結果になるのかを、試行錯誤を通じて探索する方法を考えることができます。

ここでも重要なのは、「AIが勝手に最適なものをつくってくれる」と考えないことです。

何を良い結果とするのか、どのような条件を設定するのかによって、学習の方向は大きく変わります。


高校の「情報」や数学からどうつながる?

矢入教授の研究は、高校の「情報」で学ぶプログラミング、データ活用、情報社会などとつながっています。

特にデータ分析では、「データを集めれば終わり」ではありません。

どのような方法でデータを取得したのか、どのような偏りがあるのか、どの特徴を使って分析するのか、結果をどのように評価するのかを考える必要があります。

数学では、関数、ベクトル、確率・統計などが機械学習やデータ分析を学ぶための基礎につながります。

学校でアンケートを集計した経験がある人なら、「平均値だけで全体を説明できるのか」「別の特徴を見ると違う結果になるのではないか」と考えることも、データサイエンスへの入口になります。


情報理工学科の「人間情報」とのつながり

上智大学 理工学部 情報理工学科では、「人間情報」「情報通信」「社会情報」「数理情報」という4つのキーテーマから幅広い研究が行われています。

矢入教授の研究は、人間の行動や生体情報、ヒューマンインタフェースなどを情報科学から考えるという点で、人間情報の広がりを感じられる研究です。

人間について研究するとき、生物学や心理学だけでなく、センサ、データ解析、機械学習といった情報科学の方法を使うことができます。

「人間を情報としてどのように捉えるのか」という問いも、情報理工学科で研究できるテーマの一つなのです。


推薦入試では「AIを使いたい」の先を考えよう

情報理工学科を志望する人の中には、「AIを研究したい」と考えている人も多いでしょう。

そのとき、「AIを使って人の役に立ちたい」だけで終わらず、「何をデータとして取得するのか」「そのデータから何を知りたいのか」まで考えてみてください。

たとえば、「スマートウォッチは人の行動をどう判別しているのだろう」「同じ動きをしても人によってセンサデータは違うのではないか」「脳から得られた信号から、どのように特徴を見つけるのだろう」といった疑問があります。

生成AIに興味がある人も、「AI」という言葉だけで一括りにせず、画像認識、時系列データ解析、強化学習など、さまざまな機械学習の問題があることを調べてみましょう。

自分の体験から疑問を見つけ、それを情報科学の問題として具体化していくことが、大学で学びたいことを考える第一歩になります。


「データから何を読み取るか」を研究する

矢入郁子教授の研究を見ていくと、AI研究とは単に新しいAIサービスをつくることだけではないと分かります。

センサや生体計測などから得られたデータにどのような特徴があり、それをコンピュータがどのように認識できるのか。異なる分野のデータに対して、どのような情報処理方法が適しているのか。こうした問いも知能情報学の重要な研究テーマです。

上智大学 理工学部 情報理工学科を志望している人は、「AIを使って何かをしたい」だけでなく、「どのようなデータから、何を、どのような方法で明らかにしたいのか」という視点から研究分野を調べてみてください。

もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。

※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。