上智大学外国語学部英語学科の教員紹介

上智大学 外国語学部 英語学科|物語は奪われた「声」を取り戻せるか?小川公代教授のイギリス文学研究

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。今回のテーマは、上智大学外国語学部英語学科の小川公代教授についてご紹介します。

皆さんは、小説や映画を観ていて、「なぜこの登場人物は自分の気持ちを伝えられないのだろう」と感じたことはありませんか。

物語の中には、自分の考えを自由に表現できる人物がいる一方で、社会的な立場や周囲の価値観によって、発言する機会を制限されている人物も登場します。

文学作品を読むことは、登場人物の感情を理解するだけでなく、誰の言葉が社会で受け入れられ、誰の声が聞き届けられてこなかったのかを考える機会にもなります。

小川教授は、イギリス文学を中心に、ジェンダーや医学言説、社会的に弱い立場に置かれてきた人々の「声」などを研究しています。

今回は、小川教授の研究内容や授業、ゼミの特色を通して、文学と社会の関係を考える面白さをご紹介します。


小川公代教授のプロフィール

小川公代教授は、上智大学外国語学部英語学科に所属し、イギリス文学、ジェンダー、医学言説、アイルランドなどを専門とする研究者です。

医学言説とは、病気や身体、健康などについて、医学や社会の中でどのような言葉や考え方が用いられてきたのかを捉える視点です。

文学作品には、病気を抱える人や社会的に弱い立場に置かれた人々の経験が描かれることがあります。

そうした作品を読む際には、登場人物の気持ちだけでなく、その人物が生きている社会の価値観や制度にも目を向けることが重要です。

小川教授の研究は、文学を通して、人間の経験や社会の仕組みを多角的に考えることにつながっています。

英語学科では、英語の文章を正確に読む力を身につけるだけでなく、作品の背景にある歴史や文化、社会的な問題について深く考えることができます。

大学でイギリス文学や文化について学ぶ学生

研究テーマ① 言葉には社会を変える力がある?

小川教授の研究を理解するうえで興味深い考え方の一つが、言語行為論です。

言語行為論は、英語でSpeech Act Theoryと呼ばれ、言葉を発することが単に情報を伝えるだけでなく、一つの行為として働くことに注目する理論です。

例えば、誰かに「約束します」と伝えることを考えてみましょう。

この言葉は、単に自分の考えを説明しているだけではありません。相手との間に約束という関係を成立させる働きを持っています。

また、「謝ります」「お願いします」「おめでとうございます」といった言葉も、発すること自体が社会的な行為になります。

しかし、言葉が持つ力は、誰が、どのような状況で発するかによって変わることがあります。

同じ意見を述べても、ある人の発言は重視され、別の人の発言は十分に聞いてもらえない場合があります。

そこには、社会的な立場や権力関係が関わっていることがあります。

文学作品では、こうした言葉と社会的な力の関係が、登場人物の会話や行動を通して描かれることがあります。

小川教授の研究では、言葉が持つ力や、発言することの難しさを考える視点が重要になります。


研究テーマ② 文学は奪われた「声」を取り戻せるのか

小川教授の研究で重要なテーマとなるのが、社会的に弱い立場に置かれてきた人々の「声」です。

ここでいう「声」とは、単に音声として言葉を発することだけではありません。

自分の経験や考えを表現し、それを社会の中で受け止めてもらうことも含まれます。

例えば、19世紀のイギリス社会では、女性が教育や職業、社会活動などにおいて、現在とは異なるさまざまな制約を受けていました。

文学作品には、そうした社会の中で自分の生き方を模索する女性たちの姿が描かれています。

また、宗教的な少数派や、障害のある人々など、社会の中で十分に意見を聞いてもらえなかった人々の経験も、文学研究の重要な対象となります。

物語を読むことで、歴史の教科書や公的な記録だけでは見えにくい、人々の感情や葛藤に触れることができます。

ただし、文学作品は現実をそのまま記録したものとは限りません。

誰が物語を書き、どのような視点から登場人物を描いているのかを考えることも必要です。

文学を丁寧に読み解くことは、社会の中で見過ごされてきた経験に目を向ける方法の一つになるのです。


研究テーマ③ ジェンダーと医学言説から文学を読み直す

小川教授の専門分野には、ジェンダーや医学言説も含まれています。

ジェンダーとは、社会や文化の中で形成される性別に関する役割や価値観などを考えるための概念です。

文学作品では、登場人物が社会から期待される役割と、自分自身の希望との間で葛藤する姿が描かれることがあります。

例えば、女性が家庭の中でどのような役割を求められていたのか、教育や仕事についてどのような選択肢を持っていたのかを考えることができます。

また、医学言説という視点からは、病気や身体について、ある時代の社会がどのように理解し、説明してきたのかを検討できます。

病気を抱える登場人物が、周囲からどのように扱われているのか。その人物自身の言葉は、どのように受け止められているのか。

こうした問いを通して、文学作品に描かれた人間関係や社会の価値観をより深く理解できます。

文学研究は、物語のあらすじを覚えることではありません。

作品の言葉や表現を丁寧に分析し、そこから歴史や社会について考える学問でもあります。

文学作品を読みながら社会や人間について考える高校生

担当授業|おとぎ話から映画分析まで

小川教授の教員紹介資料では、英語運用力を高める授業に加えて、文学理論やイギリス文化、文学作品の分析などに関する科目が紹介されています。

主な科目として、次のようなものが挙げられます。

  • English Skills B-1/B-2
  • Theoretical Perspectives on Literature
  • British Culture and Fiction 1/2
  • イギリス文化史概論ゼミ
  • 演習(イギリス文化・文学研究)

特に興味深いのが、おとぎ話を文学理論の視点から読み直す学びです。

例えば、子どもの頃に読んだ物語を、大人になってから読み返すと、以前とは違う印象を持つことがあります。

登場人物の行動や物語の結末について、なぜそのように描かれているのかを考えることで、新しい解釈が生まれることもあります。

また、映画分析では、文章による表現と映像による表現の違いについて考えることができます。

小説では文章で説明される登場人物の感情が、映画では表情や動作、映像の構成などによって表現されることがあります。

こうした違いに注目することで、物語がどのように意味を生み出しているのかを考えられます。

なお、担当科目や開講状況は年度によって変更される場合があります。最新の履修情報を確認してください。


小川ゼミの特色|マイノリティの「声」を研究する

小川教授のゼミでは、イギリスの歴史や文学史を学びながら、ジェンダーや宗教的マイノリティ、障害のある人々などの経験について考えます。

文学や物語を通して、社会の中で十分に聞き届けられてこなかった人々の声が、どのように表現されてきたのかを探究します。

提供されたゼミ紹介資料では、過去の卒業論文のテーマとして、次のような例が挙げられています。

  • 高齢化社会とケア
  • シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』と家庭教師
  • 『ハリー・ポッター』と弱者男性
  • ヴァージニア・ウルフが現代日本の女性作家に与えた影響

このように、古典文学から現代の人気作品まで、幅広い作品や社会的なテーマが研究対象となっています。

例えば、『ジェイン・エア』を読む場合、主人公の生き方や恋愛だけでなく、当時の女性の職業や社会的な立場について考えることができます。

また、『ハリー・ポッター』のような身近な作品も、登場人物の関係や社会の構造に注目することで、研究の対象として捉えることができます。

好きな作品を深く読み、その作品を通して社会について考えることができる点は、文学研究の魅力の一つです。


ゼミではどのように卒業論文を完成させる?

小川教授のゼミでは、学生がそれぞれの関心に基づいて研究テーマを設定し、卒業論文の完成を目指します。

研究方法としては、文化研究、テクスト分析、映画分析、フィールドワークなどが紹介されています。

テクスト分析とは、文学作品などの文章を丁寧に読み、言葉の使い方や構成、表現の特徴を調べる方法です。

また、クリティカル・リーディングと呼ばれる批判的な読み方も重要になります。

批判的に読むとは、作品を否定することではありません。

書かれている内容をそのまま受け取るのではなく、どのような前提や価値観があるのか、別の解釈が可能ではないかと考えながら読むことです。

学生は先行研究を調べ、自分の考えを整理し、ゼミで発表や意見交換を行いながら研究を進めます。

他者からの質問を受けることで、自分では気づかなかった視点を発見することもあります。

こうした積み重ねを通して、作品の分析を根拠に基づいた論文へと発展させていきます。


高校英語とのつながり|物語を新しい視点から読んでみよう

小川教授の研究は、高校での英語学習や読書経験ともつながっています。

例えば、英語の長文読解で物語文を読んだとき、登場人物の気持ちや行動の理由を考えることがあるでしょう。

大学では、そこからさらに一歩進み、登場人物が生きている社会の価値観や、物語が書かれた時代の背景について考えます。

また、登場人物の中で誰が多く発言しているのか、誰の気持ちが詳しく描かれているのかに注目することもできます。

同じ作品でも、読むときの視点を変えることで、新しい発見が生まれることがあります。

普段から小説や映画を楽しんでいる人は、好きな作品を一つ選び、登場人物の立場や社会的な背景について考えてみるとよいでしょう。

作品を楽しむことから、作品を研究することへと関心を広げられるのが、大学で文学を学ぶ面白さです。


推薦入試を目指す高校生へ|文学への関心を社会の問いにつなげよう

上智大学外国語学部英語学科の推薦入試を考えている皆さんは、文学への関心を、大学で何を学びたいのかという問いと結びつけて考えてみましょう。

例えば、小説を読んで、登場人物が自分の気持ちを伝えられない場面に疑問を持った経験があるかもしれません。

その場合、なぜその人物は発言しにくい立場に置かれているのか、物語が書かれた時代の社会とどのような関係があるのかを調べてみることができます。

また、ジェンダーやケア、高齢化などの社会的な問題に関心がある人は、それらが文学作品の中でどのように描かれているのかを考えることもできます。

大切なのは、「本が好き」「英文学に興味がある」という気持ちから一歩進み、具体的な疑問を見つけることです。

好きな作品を一つ選び、その作品を通して考えたことや、さらに調べてみたいことを整理してみましょう。

英語学科で文学を学ぶことは、英語の文章を読む力を高めるだけでなく、言葉や物語を通して人間や社会について考えることにもつながります。

なお、特定の教員の研究に関心を持つことが推薦入試で有利になるわけではなく、入学後に必ずその教員のゼミに所属できるとも限りません。


まとめ|文学を通して社会の中の「声」を考える

小川公代教授は、イギリス文学を中心に、ジェンダーや医学言説、社会的に弱い立場に置かれてきた人々の「声」などを研究しています。

文学作品を読むことは、登場人物の感情を理解するだけでなく、社会の価値観や歴史的な背景について考える機会にもなります。

小川教授の授業やゼミでは、おとぎ話や古典文学、現代の小説、映画などを通して、物語と社会の関係を多角的に考えることができます。

文学を通して人間や社会について深く学びたい方は、小川教授の研究をきっかけに、イギリス文学やジェンダー研究について調べてみてはいかがでしょうか。

KOSSUN教育ラボでは、上智大学の推薦入試を目指す高校生に向けて、出願書類の準備や面接対策などのサポートを行っています。受験準備についてお悩みの方は、お気軽に無料個別相談をご利用ください。

※本記事は、提供された記事案をもとに作成しています。教員の所属・職位・研究内容・担当科目・ゼミの活動内容などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご確認ください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。