上智大学 理工学部 情報理工学科 教員紹介|新倉貴子教授の神経科学・神経変性疾患研究とは

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。

今回のテーマは、

「上智大学 理工学部 情報理工学科の新倉貴子教授と、神経科学・神経変性疾患の研究」です。

情報理工学科という名前から、AI、プログラミング、データサイエンスなどを想像する人も多いでしょう。しかし、上智大学の情報理工学科では「人間情報」という視点から、人間の脳や神経について研究することもできます。

その中で、老化に伴う脳の変化やアルツハイマー病などの神経変性疾患を、細胞や分子のレベルから研究しているのが新倉貴子教授です。


新倉貴子教授はどんな研究者?

新倉貴子教授は、上智大学 理工学部 情報理工学科に所属し、神経科学、分子細胞生物学、神経病理学を専門としています。

東京大学で博士(薬学)の学位を取得し、研究キーワードには神経変性疾患、Humanin(ヒューマニン)、老化などが挙げられています。

化合物安全性研究所や東燃株式会社での勤務を経て、英国の研究機関、米国のThomas Jefferson UniversityやMichigan State University、慶應義塾大学医学部、米国Georgetown University、カナダSimon Fraser Universityなどで研究を行い、2012年から上智大学 理工学部 情報理工学科で研究・教育に携わっています。

現在は、脳老化の分子機序や細胞生存因子の作用機序などを中心に研究しています。


「脳が老化する」とはどういうこと?

私たちの体は、年齢を重ねるにつれてさまざまな変化が起こります。脳も例外ではありません。

しかし、「年を取ると脳が変化する」というだけでは、科学的な説明にはなりません。

神経細胞の中では何が変化しているのか。どのような分子が関係しているのか。正常な老化と、病気につながる変化にはどのような違いがあるのか。

新倉教授は、こうした問題を、動物個体、細胞、分子という異なるレベルから研究しています。

非常に複雑な脳という器官を理解するために、細胞の中で起きている小さな変化まで掘り下げていくのです。


アルツハイマー病を「分子レベル」で考える

新倉教授が研究対象としているものの一つが、アルツハイマー病などの神経変性疾患です。

神経変性疾患では、神経細胞の機能が低下したり、失われたりすることが病態と関係します。

新倉教授は、アルツハイマー病など、老化に伴って発症頻度が高くなる神経変性疾患について、その病態がどのような仕組みで生じるのかを研究しています。

ここで重要なのは、病気だけを見るのではなく、その裏側にある「正常な脳では何が起きているのか」も理解しようとしている点です。

病気になった状態と正常な状態を比較し、細胞や分子にどのような違いがあるのかを調べることが、脳の仕組みそのものを理解することにもつながります。


研究の重要なキーワード「Humanin」とは?

新倉教授の研究を知るうえで重要なキーワードが「Humanin(ヒューマニン)」です。

Humaninは24個のアミノ酸からなるペプチド因子で、アルツハイマー病における神経細胞死を抑制する因子として見いだされました。

新倉教授の研究では、このHumaninが細胞をどのように保護するのか、細胞の機能や加齢に伴う変化とどのように関係するのか、その作用の仕組みを調べています。

つまり、「Humaninがよい働きをするらしい」というところで終わるのではなく、「なぜその働きが生じるのか」を分子レベルで明らかにしようとしているのです。


Humaninはアルツハイマー病とどう関係する?

アルツハイマー病では、アミロイドベータと呼ばれる物質が病態と深く関係していることが知られています。

上智大学が紹介している新倉教授の研究では、Humaninがアミロイドベータによる神経細胞死を抑制する作用について研究されてきました。

さらに、高い活性を持つHumaninの誘導体について、アルツハイマー病モデルマウスで記憶障害の改善や、脳内におけるアミロイドベータ蓄積の軽減が確認された研究成果も報告されています。

ただし、モデル動物や培養細胞で確認された効果が、そのまま人間の治療に利用できるという意味ではありません。

まずは、どのような分子がどこに働き、どのような変化を引き起こしているのかを一つずつ明らかにすることが重要です。

こうした基礎研究を積み重ねることで、神経変性疾患や老化についての理解を深めることが目指されています。


「細胞を守る仕組み」を調べる

新倉教授の研究では、Humaninを「細胞生存因子」という視点から研究しています。

私たちの細胞は、ただ存在しているわけではありません。外部からの刺激や細胞内部の変化に反応しながら、生命活動を維持しています。

その中には、細胞の生存や機能を支えるさまざまな仕組みがあります。

新倉教授はHumaninの作用機序を解析することで、細胞の生存や加齢に伴う変化に関係する分子機構を明らかにしようとしています。

病気になった後だけを見るのではなく、そもそも細胞にはどのような「生きる仕組み」があるのかを調べる研究ともいえるでしょう。


マウス、細胞、分子を使って脳を調べる

脳の研究というと、人間の脳を画像で観察する研究をイメージするかもしれません。しかし、新倉教授の研究では、モデル動物、培養細胞、分子レベルでの解析などを用います。

たとえば、ある分子の働きを詳しく知りたい場合、培養した細胞を使って、その分子を加えたときに細胞がどのように変化するのかを調べることができます。

一方、脳という器官全体の中でどのような変化が起こるのかを考えるためには、モデル動物を利用した研究も重要になります。

一つの方法だけで結論を出すのではなく、個体、細胞、分子という異なるスケールから同じ問題を考えることで、複雑な生命現象の理解を深めていきます。


なぜ情報理工学科で神経科学を研究するの?

「情報理工学科なのに、なぜ細胞や脳を研究するの?」と疑問に思う人もいるでしょう。

上智大学 理工学部 情報理工学科では、研究領域の一つとして「人間情報」が設定されています。新倉教授の神経変性疾患病態解析・細胞生存因子機能解析も、この人間情報分野に位置づけられています。

人間そのものを理解することも、情報理工学科における重要な研究の方向性の一つなのです。

脳や神経では、神経細胞同士が情報をやり取りしています。その機能を細胞や分子のレベルまで掘り下げて理解する研究は、「人間とはどのような仕組みで機能しているのか」を考えることにつながります。

AIやコンピュータだけではない情報理工学科の幅広さがよく分かる研究分野です。


高校の生物・化学からどうつながる?

新倉教授の研究は、高校で学ぶ生物や化学ともつながっています。

高校生物では、細胞、神経系、遺伝情報、タンパク質などを学びます。化学では、分子の構造や化学結合などを学びます。

大学では、こうした知識を基礎として、「特定の分子が神経細胞へどのような作用を及ぼすのか」「老化すると細胞の中で何が変わるのか」といった、より具体的な問いへ進んでいきます。

教科書に書かれている仕組みを覚えるだけではなく、「なぜそうなるのか」「どのような実験をすれば確かめられるのか」と考えることが研究の入口です。

生命科学に興味がある人は、高校で学んだ内容を「まだ分かっていないことは何だろう」という視点から見直してみるとよいでしょう。


推薦入試では「認知症を治したい」から問いを深めよう

医療や神経科学に興味がある人の中には、「認知症の治療に役立つ研究がしたい」と考えている人もいるでしょう。

そこから一歩進んで、「そもそも神経細胞はなぜ失われるのだろう」「正常な老化と病気による変化には何が違うのだろう」「細胞を守る分子はどのような仕組みで働いているのだろう」と考えてみてください。

家族の経験やニュース、学校の生物の授業などをきっかけに関心を持ったのであれば、その経験から自分が何を疑問に思い、何を調べたのかを整理することもできます。

高校生の段階で治療法を提案する必要はありません。

「病気を治したい」という大きな目標から、病気の仕組みを理解するためには何を知らなければならないのかへと問いを具体化していくことが大切です。


脳の病気を理工学から解き明かす

新倉貴子教授の研究を見ていくと、アルツハイマー病などの神経変性疾患を理解するためには、医学だけではなく、生物学、化学、薬学、神経科学など、さまざまな視点が必要であることが分かります。

Humaninという細胞生存因子の作用を調べ、老化や神経変性疾患の背景で細胞や分子に何が起きているのかを明らかにしていく。その積み重ねが、正常な脳の働きや老化そのものを理解することにもつながります。

上智大学 理工学部 情報理工学科を志望している人は、AIやプログラミングだけでなく、人間の脳や生命現象を対象とする「人間情報」の研究にも注目してみてください。

もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。

※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。