上智大学 経済学部 経済学科|中村さやか教授に学ぶ「医療経済学」と病院・医療制度の仕組み

こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。

今回のテーマは、
「上智大学 経済学部 経済学科・中村さやか教授の研究から考える、医療経済学と病院・医療制度の仕組み」です。

病院に行ったとき、「なぜ医療費はこの金額なのだろう」「住んでいる地域によって受けられる医療に違いはあるのだろう」と考えたことはありませんか。医療は生命や健康に関わる大切なサービスですが、医師や病院、薬、保険制度などを維持するためには多くの人材や費用も必要です。

こうした医療の仕組みを経済学の視点から分析するのが医療経済学です。上智大学経済学部経済学科の中村さやか教授は、医療経済学、応用ミクロ計量経済学、産業組織論を研究分野としています。上智大学の最新公式情報でも、経済学部経済学科の教授として所属していることが確認できます。


中村さやか教授が研究する医療経済学とは

医療経済学とは、医療サービスや健康に関する問題を、経済学の理論やデータを使って分析する分野です。

例えば、「医療費の負担が変わると患者の受診行動はどう変わるのか」「地域によって医療費に差が生まれるのはなぜか」「健康を守るための制度は人々の行動にどのような影響を与えるのか」といった問いがあります。

中村教授の研究では、医療費の地域差、子どもの健康、肥満ややせなど、人々の健康と制度・環境との関係も扱われています。

また、上智大学経済学部の公式情報では、担当科目としてINTRODUCTION TO ECONOMICS、INTRODUCTION TO MICROECONOMICS、INTERMEDIATE MICROECONOMICS、INTRODUCTION TO STATISTICS、ミクロ経済学特講II、計量経済学特講Iなどが掲載されています。


医療は普通の商品と何が違うのか

経済学では、商品やサービスを売る側と買う側の関係を考えます。しかし、医療には一般の商品とは異なる特徴があります。

例えば、文房具を買う場合は、値段や機能を自分で比較して選ぶことができます。一方、病気になったときに「どの治療が自分に一番適しているのか」を患者自身が正確に判断することは簡単ではありません。医師のほうが専門的な情報を多く持っているからです。

こうした、関係する人同士で持っている情報量に差がある状態を「情報の非対称性」といいます。

また、緊急の治療が必要な場合には、「少し高いから今回は買わない」という普通の買い物と同じ判断もできません。医療は生命や健康に関わるからこそ、価格だけでは考えられない問題があるのです。


医療費の地域差から何が見えてくる?

中村教授の研究キーワードの一つに「医療費の地域差」があります。同じ日本国内でも、地域によって一人当たりの医療費や医療サービスの利用状況が異なることがあります。

では、その違いはなぜ生まれるのでしょうか。高齢者が多いからなのか、病院の数が多いからなのか、それとも人々の受診行動に違いがあるのでしょうか。

一つの数字だけを見ても、理由は分かりません。人口構成、医療機関の数、患者の行動など、複数の要因を比較しながら考える必要があります。

ここに経済学の面白さがあります。「地域によって違います」と事実を確認して終わるのではなく、「なぜ違うのか」をデータから確かめようとするのです。


学校給食と子どもの健康も経済学で研究できる

中村教授は、子どもの健康についても研究しています。上智大学では、学校給食が子どもの健康に与える影響について、実際のデータを使った研究も紹介されています。

学校給食と経済学は、一見するとあまり関係がないように思えるかもしれません。しかし、「給食という制度が子どもの健康にどのような影響を与えているのか」を分析することは、政策の効果を考える経済学の研究になります。

例えば、学校給食を提供することによって、家庭の経済状況による食生活の差を小さくできる可能性があります。一方で、本当に健康状態が改善したのかを判断するには、印象だけではなくデータによる検証が必要です。

「良い制度だと思う」ことと、「実際に効果が確認できる」ことは同じではありません。大学では、この違いを意識しながら社会の制度を考えていきます。


応用ミクロ計量経済学とは?

中村教授の研究分野には「応用ミクロ計量経済学」もあります。少し難しい言葉ですが、簡単にいえば、人や企業などの行動について、実際のデータと統計的な方法を使って分析する分野です。

例えば、ある制度が始まった後に病院へ行く人が減ったとします。しかし、それだけで「制度のせいで減った」とは言えません。同じ時期に感染症が減った、人口構成が変化したなど、別の原因があるかもしれないからです。

そこで、さまざまな条件を考慮しながら、「本当にその制度による変化なのか」をできるだけ丁寧に検証していきます。

高校の探究活動でアンケートや統計データを使ったことがある人なら、「数字を集めただけでは結論を出せない」という感覚は理解しやすいかもしれません。


高校までの学びと大学での医療経済学の違い

高校の公共などでは、日本の社会保障制度や医療保険の基本的な仕組みを学びます。大学では、制度を覚えるだけでなく、「この制度は実際にどのような効果を生んでいるのか」と問いを深めます。

例えば、「医療費の自己負担を下げれば患者にとって良い」と考えることができます。一方で、利用する人が増えれば医療費全体が増える可能性もあります。

患者、医療従事者、政府、保険料や税金を負担する人など、それぞれの立場から考えると、一つの制度にも複数の見方があることが分かります。

大学での経済学では、「正しい制度はこれだ」とすぐに決めるのではなく、理論とデータを使いながらメリットと課題の両方を考えていきます。


推薦入試に向けて身近な医療の疑問を深めてみよう

上智大学経済学部経済学科の推薦入試を考えている人も、最初から医療経済学の専門知識を持っている必要はありません。

例えば、「なぜ地域によって病院の数が違うのだろう」「高齢化すると医療費はどう変化するのだろう」「誰もが必要な医療を受けられる仕組みを維持するには何が必要なのだろう」といった疑問から始めることができます。

家族の通院経験や、医師不足、医療費、学校給食などのニュースを見たことが、関心のきっかけになる場合もあります。ただし、自分の体験だけで社会全体を説明するのではなく、「他の地域ではどうなのか」「データではどのような傾向があるのか」と視野を広げてみましょう。

出願書類や面接で問われる志望理由を整理するときにも、「医療に興味があります」で終わらせず、何に疑問を持ち、なぜその問題を経済学から考えたいのかまで深めてみてください。


医療を「制度」と「人の行動」の両方から考えてみよう

医療経済学の面白さは、医療制度そのものだけでなく、その制度の中で人がどのように行動するのかまで考えられる点にあります。

自己負担が変われば患者はどう行動するのか。住んでいる地域によって医療の利用状況は変わるのか。学校給食のような制度は子どもの健康にどのような影響を与えるのか。身近なテーマから、多くの研究上の問いを見つけることができます。

そして、「患者にとってどうか」だけでなく、医療従事者、家族、行政、社会全体から見るとどうなのかと考えることも大切です。異なる立場の人の意見を知ることで、自分の最初の考えが変わることもあります。

医療に関するニュースを見かけたら、「この制度によって、人々の行動はどう変わるのだろう」と考えてみてください。その小さな疑問が、医療経済学という学問への入り口になるかもしれません。

もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。

※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト、上智大学経済学部公式サイト、上智学院教員教育研究情報データベース等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。教員の所属、研究分野、担当科目、カリキュラム、入試制度などは今後変更・更新される場合があります。受験を検討している方は、本記事の情報だけで判断せず、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。


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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。

この記事を監修した人

川又ヒトミ(KOSSUN教育ラボ プロ講師)

川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師

【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。 プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。 著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。