
上智大学 理工学部 物質生命理工学科 教員紹介|長尾宏隆教授の錯体化学・物質変換研究とは
こんにちは!KOSSUN教育ラボ教務担当(上智大学推薦入試サポート)です。
今回のテーマは、
「上智大学 理工学部 物質生命理工学科の長尾宏隆教授と、金属錯体を利用した物質変換の研究」です。
高校の化学では、鉄や銅などの金属元素について学びます。しかし大学では、金属イオンの周囲にさまざまな分子を組み合わせることで、新しい性質や反応性を持つ化合物をつくる研究があります。長尾宏隆教授は、こうした「金属錯体」を合成し、その性質を利用して、安定な分子を別の有用な物質へ変換する研究に取り組んでいます。
長尾宏隆教授の専門は錯体化学・生物無機化学

長尾教授は、上智大学 理工学部 物質生命理工学科の教授です。主な研究テーマは「金属錯体の合成と配位子反応を利用した物質変換」で、研究キーワードには錯体化学、配位化学、生物無機化学、電気化学などが挙げられています。
学位は理学博士で、1995年に上智大学へ着任し、2010年から物質生命理工学科の教授を務めています。
研究では、遷移金属の一つであるルテニウムを中心に、さまざまな無機化合物や有機化合物を組み合わせ、新しい金属錯体をつくっています。
金属錯体とはどんな物質?
金属錯体とは、金属イオンの周囲に「配位子」と呼ばれる分子やイオンが結合した化合物です。
同じ金属を使っていても、周囲にどのような配位子を配置するかによって、色や安定性、反応性などが変わります。そのため、目的に合わせて金属と配位子を組み合わせることで、新しい機能を持った化合物を設計できます。
長尾教授の研究室では、まず新しい錯体を合成し、その構造や性質を調べ、さらに錯体上でどのような化学反応が起こるのかを研究しています。
高校で学ぶ金属イオンや化学結合の知識が、大学では「金属を中心とした分子を設計する」という研究へ発展していくのです。
安定な分子を「反応できる状態」にする
長尾教授の研究で重要な考え方の一つが「小分子の活性化」です。
自然界には、窒素分子や二酸化炭素のように身近に存在していても、そのままでは簡単に別の物質へ変換できない分子があります。こうした安定な分子を金属錯体に取り込ませることで、反応しやすい状態へ変化させる研究が行われています。
長尾教授は、窒素を含む化合物や二酸化炭素などを対象に、錯体化学の力で有用な化合物へ変換する方法を研究しています。
「身近に大量に存在する物質を、どうすれば必要な物質へ変えられるのか」という問いを、原子や分子のレベルから考える研究です。
大気中の窒素を捕まえる金属錯体も開発
2026年には、長尾教授らの研究グループが、大気中の窒素分子を捕獲できる金属錯体を開発した研究成果を上智大学が発表しています。
窒素分子は空気中に豊富に存在しますが、非常に安定した分子で、そのままでは反応させることが簡単ではありません。
研究では、二つのルテニウムイオンの間に窒素分子を取り込んだ錯体を合成しました。さらに、酸素が混ざった大気中からでも窒素を捕獲できることが示されています。
こうした研究は、窒素分子をどのように化学反応へ利用できるのかを考える基礎となります。すぐに新しい技術が完成するというものではありませんが、安定な窒素分子を扱うための新しい化学的アプローチとして注目できます。
二酸化炭素を物質変換の対象として考える

長尾教授は、二酸化炭素を金属錯体へ取り込み、別の化合物へ変換する研究にも取り組んでいます。
二酸化炭素というと、地球温暖化との関係だけをイメージする人も多いかもしれません。しかし化学の視点では、二酸化炭素も炭素原子を含んだ一つの物質です。
そのため、「排出量を減らす」という視点だけでなく、「物質としてどのように利用できるか」という研究もあります。
ただし、二酸化炭素を別の物質へ変換すれば、それだけで環境問題が解決するわけではありません。反応に必要なエネルギーや効率なども含めて考える必要があります。化学と環境を結びつけるときには、こうした多面的な視点が大切です。
生物無機化学という視点
長尾教授の専門には「生物無機化学」もあります。
私たちの体の中でも、鉄や銅、亜鉛などの金属元素が重要な働きをしています。たとえば、タンパク質や酵素の中に金属イオンが組み込まれ、化学反応を助けている場合があります。
つまり、金属は工業材料だけに使われるものではなく、生命活動とも深く関係しています。
金属を中心とした化学反応を理解することは、物質の性質を考えるだけでなく、生命現象を化学から理解することにもつながります。物質と生命の両方を扱う上智大学 理工学部 物質生命理工学科らしい研究分野の一つといえるでしょう。
高校の化学からどんな疑問を広げられる?
長尾教授の研究に興味を持ったら、高校化学で学ぶ金属や化学反応から問いを広げてみてください。
たとえば、「なぜ金属イオンは種類によって色が違うのだろう」「金属に結びつく分子を変えると、反応性も変わるのだろうか」「空気中の窒素はたくさんあるのに、なぜ簡単に別の物質へ変えられないのだろう」といった疑問があります。
授業で覚えた化学反応について、「なぜこの条件なら反応するのか」「別の金属を使ったらどうなるのか」と考えてみることも、大学での研究につながります。
推薦入試では「化学が好き」の先を考えよう

上智大学 理工学部 物質生命理工学科の推薦入試を考えている場合、「化学が好きです」「環境問題に関心があります」というところで止めず、何に疑問を持っているのかを深めてみましょう。
たとえば、「反応しにくい分子を化学の力で利用する方法を知りたい」「金属錯体によって反応性が変化する仕組みを研究したい」「二酸化炭素や窒素を物質として利用する化学に興味がある」といった形で、自分の関心と大学での研究をつなげられます。
高校生の段階で高度な錯体化学を理解している必要はありません。授業や実験、ニュースなどで気になったことについて調べ、「なぜだろう」「大学ではどう研究されているのだろう」と問いを広げていくことが大切です。
長尾教授の研究を知ると、高校で学ぶ金属イオンや化学反応の知識が、窒素や二酸化炭素の物質変換といった最先端の研究へつながっていることが分かります。教科書で学んだ一つの化学反応から、その先にどんな研究があるのか、ぜひさらに調べてみてください。
もし一人で整理するのが難しいと感じたら、KOSSUN教育ラボの無料個別相談も活用してみてください。
※本記事は、記事作成時点で上智大学公式サイト等に掲載されている情報を確認したうえで作成しています。入試制度、出願資格、試験内容、日程、カリキュラム、教員の所属・研究分野などは変更される場合があります。受験を検討している方は、必ず上智大学公式サイトおよび対象年度の最新の入学試験要項をご自身で確認してください。
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※この記事は専門家による監修のもと執筆されています。
この記事を監修した人
川又 ヒトミ(かわまた・ひとみ)
KOSSUN教育ラボ プロ講師
【略歴】
お茶の水女子大学卒業後、私立高校に入職。進路指導部長を務め、大学入試改革や新学習指導要領、ギガスクール構想など変化する教育現場にて指揮を執る。
プロ講師に転向後は、上智大学をはじめ、難関大学に毎年多数の合格者を輩出。最新情報を駆使した戦略的な指導に定評がある。塾生はもちろん、保護者、講師からも一目置かれ、「合格請負人」の異名を取る人気講師として知られる。
著書に『総合型選抜・推薦型選抜で「凡人」が難関大に合格る本』(ビジネス実用社)。


